「グリーン植民地主義」脱炭素を途上国に押し付ける先進国のエゴ

海岸侵食で家を失った人々のための避難所(セネガル、11月4日)|Leo Correa / AP Photo

 気候変動を食い止めるため世界規模での脱炭素への取り組みが必要だとして、先進国は貧困国での化石燃料の開発や使用を制限しようとしている。しかしこれは貧困国から化石燃料を取り上げ、その成長と発展の機会を奪うことにもつながる。すでに化石燃料の恩恵を受け発展し、いまもエネルギーを大量に使い続ける先進国の身勝手さが批判されている。

◆化石燃料は必要、途上国の発展を左右
 今年の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)で、アメリカ、カナダなど20ヶ国が来年末までに海外の化石燃料プロジェクトへの公的融資を中止することに合意した。歴史的な第一歩という声もあるが、この公約が「グリーン植民地主義」だと批判する意見もある。

 環境研究センター、ブレークスルー・インスティチュートのビジャヤ・ラマチャンドラン氏は、フォーリン・ポリシー誌に寄稿した記事の中で、そもそも最貧国の人々がクリーンエネルギーだけで生活できるはずがないと述べる。アフリカでは4億人以上が1日2ドル(約230円)以下で生活しており、それらの国々の財政にとって現在のグリーンテクノロジーは高すぎるため、それだけでは彼らのニーズは到底満たせないと指摘する。

 さらに、電気だけでなく化石燃料はアフリカの発展にとって重要だ。農業の収穫量を増やす化学肥料生産、道路やビルの建設、食品や医薬品の保管、輸送セクターなどすべてが石油やガスに依存している。沖合に大規模なガス田があり、多くの途上国があるサハラ以南のアフリカでは、ガス・プロジェクトへの融資が禁じられれば、経済発展と生活水準向上を支える重要なエネルギーインフラへのサポートが事実上なくなることになる。途上国のエネルギー需要に対し真摯な対応をしないのは、非人道的で思いやりがなく不道徳だと、ラマチャンドラン氏は主張している。

Text by 山川 真智子