「グリーン植民地主義」脱炭素を途上国に押し付ける先進国のエゴ

海岸侵食で家を失った人々のための避難所(セネガル、11月4日)|Leo Correa / AP Photo

◆排出量より燃料の種類 ゴールポスト動かす富裕国
 インドのニュースメディア『Newsclick』の創刊者兼編集者のプラビル・プルカヤスタ氏は、再エネのみで構成された送電網への移行は技術的にはまだまだ先の話だと指摘。エネルギーを貯蔵するための新技術が開発されない限り、日々の再エネの変動に対応するため、短期的にはガス、石油、石炭しか選択肢はないと見ている。

 ところがここで富裕国の二枚舌が明らかになったと同氏は述べる。COP26では、各国が温室効果ガスをどれだけ排出するかという議論から、どの燃料を廃止するかという議論になった。十分なガス資源がある欧米は、脱石炭は求めても脱天然ガスとは言わなかったのだ。(Newsclick)

 確かに電気エネルギーを生産するために、ガスは石炭の半分の二酸化炭素しか排出しないが、ガスで石炭の2倍の電力を生産すれば排出量は同じだ。OECDの先進国における一人当たりの平均電力消費量は、南アフリカを除くサハラ以南のアフリカの50倍以上だ。さらにカリフォルニア州民がビデオゲームに使う電力は、ケニアの5300万人の国民全体が生活に使用する電力よりも多いという試算もある(アクシオス)。プルカヤスタ氏は、ネットゼロや特定の燃料の段階的な廃止を語る富裕国は、二酸化炭素の過剰排出を続けながら、他国のゴールポストを動かしていると指摘している(Newsclick)。

◆もはや偽善、他国を犠牲にする豊かさ
 富裕国の偽善を最もよく表しているのがノルウェーだとされている。化石燃料プロジェクトへの国際的な融資を停止する動きを主導してきたが、自国の輸出の半分近くを占めるのは原油と天然ガスだ。現在のエネルギー価格高騰の恩恵を存分に受けているとラマチャンドラン氏は指摘する。途上国を発展から遠ざけても自分たちは豊かなままでいようとしているとし、ノルウェーの態度に批判的だ。(フォーリン・ポリシー誌)

 また、自国の石油需要を満たすために主要供給国に増産を求めたアメリカや、野心的な気候変動対策の目標を掲げる割には石炭からの撤退に20年の猶予を与えたドイツのメルケル氏にも偽善は当てはまるとしている。(フォーリン・ポリシー誌)

 アクシオスは、一部の豊かな国は気候変動に関する難しい政治的選択を、自国民や有権者ではなく、投票で反論できない最貧国の人々に任せているように見えると述べる。気候変動回避と極貧撲滅は世界の重要課題だが、一方を犠牲にして他方と戦うことはあってはならないとしている。

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Text by 山川 真智子