「アメリカは内戦に向かっている」語られる危機 議会襲撃から1年

2021年1月6日に起きた連邦議会議事堂襲撃事件|Julio Cortez / AP Photo

◆かつての支配再び 白人至上主義者が戦闘へ
 ウォルター氏は、内戦を起こすのは最も不遇で貧しく差別された人々だと思われがちだが、実はかつて政治的・文化的に優位に立っていたがいまは下り坂にある人々、またはかつては権力を持っていたがそれを失った市民だと指摘する。彼らは、国は自分たちのもので権力は自分たちが握るべきだと信じており、それを失うと信じられないほど不快になる。そして現在優勢にあるグループに怒り、支配を再確立しようと結集して戦う傾向があるとしている。(同)

 同氏は21世紀の内戦は複数の派閥、民兵、準軍事組織によるものだと指摘。彼らが好むのはテロやゲリラ戦で、通常の戦争で米軍と戦うつもりはないとする。コラムニストのポール・ブランダス氏は、最大の脅威は右派だとしており、「人種や民族的な動機による暴力的過激派、とくに白人至上主義過激派が国内において最も根強く致命的な脅威として残る」という2020年10月の国土安全保障省の報告を紹介している。これまでは幸運にも彼らの活動を抑えることができたが、いつか運が尽きるときが来るのを恐れていると同氏は述べている。(同)

◆アメリカに2つの動き 制度刷新の障害に
 マルケ氏は、まだ政府は救えるというリベラルのお花畑的思考に業を煮やしつつも、暴力と団結で右派が権力を握れば民主主義は崩壊するとして、あらゆる面で破綻したシステムの刷新が必要だと述べる。(ガーディアン紙)

 米政治学者のスティーブン・レベツキー氏は、アメリカには2つのまったく異なる動きが同時に起きていると指摘。多様性と平等を保障する初の多人種民主主義に向かっている反面、危険な過激派の行動を見て見ぬふりする共和党少数派が存在するとしている。レムニック氏は、共和党が反主流主義、反民主主義を自らに課し、伝統的な政策価値ではなく、部族的帰属意識と恨みに注意を向ける政党になってしまったとする。共和党指導者が立ち上がり、民主党や無党派層とともに民主的価値の再確認のために連帯する兆しはないとして、今後を憂慮している。(ニューヨーカー誌)

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Text by 山川 真智子