再燃するウイルス流出説 これまで否定されたのはトランプ氏のせい?

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◆「トランプが主張したから反対した」ジャーナリスト猛省
 実際のところ、これまで支持されてきた動物からの自然な感染の証拠は、流出説同様見つかっていない。にもかかわらず流出説ばかりが否定された大きな理由の一つは、初期に陰謀論と一括りで捉えられたこと、そしてトランプ政権によって主張されていたことだ。BBCの中国特派員、ジョン・サッドワース氏は、流出説はトランプ時代の偽情報に汚染された環境で生まれ、トランプ氏に後押しされたことで弱体化したと述べている。

 WSJの論説委員、ホルマン・W・ジェンキンズ・Jr氏は、自分たち報道関係者は権威への抗議として実験室流出説を否定したと述べる。証拠があるかないかにかかわらず、自分たちが見習いたいと思う人の態度を採用し、「流出説には議論の余地がある」の代わりに「トランプ氏の無能がまた実験室流出説で証明された」という見出しをつけたと指摘する。偏見があったのは確かで、「我々は悪いジャーナリストだ」と、多くのメディアがその非を認めていると述べている。

◆科学ではなく科学者を信じた? 科学が反科学に
 科学者たちにも問題があったという指摘もある。米公共ラジオ網NPRの記者、タマラ・キース氏は、流出説を支持することは中国人バッシング、中国人への人種差別と見られるという事実があったとし、これがジャーナリストだけでなく、科学者にも影響を与えたとしている。

 昨年2月には、流出説を否定し、コロナと戦う中国の科学者や医療専門家との連帯を示すという書簡を複数の公衆衛生専門家が医学誌ランセットに発表。また3月には、コロナウイルスを実験室で作ることは不可能だとした専門家の研究が科学誌ネイチャーに発表された。後日これらは武漢のウイルス研究所に利害関係のある人物たちの関与があったと報じられているが、こういった状況下で流出説を支持し政治的議論や人種問題に巻き込まれることを多くの科学者たちは望まなかったと思われる。

 ワシントン・ポスト紙のコラムニスト、メーガン・マクアードル氏は、今回の事件は、科学信仰はしばしばきわめて反科学的になることを示したとしている。科学とはエリートに認められた信頼できる科学の専門家グループに自分の判断を従わせることを要求するものであり、そのため多くの科学者に否定された流出説が否定された。専門家のコンセンサスはやや幻想的なものだったようだとし、科学者も集団的思考に入りやすく、非科学的な懸念が公の発言に入り込むことを忘れてはならないとしている。

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Text by 山川 真智子