「新型コロナ起源、再調査すべき」著名科学者ら 「研究所流出」説も排除せず

AP Photo / Ng Han Guan

 新型コロナウイルスの起源を探るため、中国で調査を行った世界保健機関(WHO)は、武漢の研究所からウイルスが流出した可能性はきわめて低いと報告した。しかし、一部の研究者たちは調査が適切に行われていなかったと指摘する。研究所から事故によって流出した可能性が排除できないとし、科学雑誌『サイエンス』に連名で、パンデミックの発生源をより明確にする必要があるという書簡を発表している。

◆調査自体に問題あり 科学者納得できず
 適切な調査を求めたのは、世界的に著名な研究機関に属する18人の研究者たちで、以下のようにWHOの報告の問題点を説明している。

 まず、WHOの調査は中国と共同で行われたが、研究の第一段階のための情報、データ、サンプルは中国側チームが収集してまとめ、残りのチームがそれに基づいて分析を行った。感染が自然に波及したのか、実験室での事故なのかを明確にサポートする知見は得られなかったが、チームは中間宿主からの人獣共通感染症の可能性が高い~非常に高いと評価。実験室での事故は、きわめて可能性が低いとした。

 2つの説はバランスよく検討されておらず、実験室の事故の可能性を取り上げたのは、報告書とその付属書の313ページのうちわずか4ページであった。WHOのテドロス事務局長も、事故を裏付ける証拠に関する報告書の検討が不十分だとコメントしている。

 研究者たちは、十分なデータが得られるまでは、2つの仮説を真摯に受け止め必要があると主張する。適切な調査には、透明性、客観性、データ重視、幅広い専門家の参加、独立した監督があるべきで、利益相反の影響を最小限に抑えるために責任を持って管理されるべきだとしている。また、記録は公開されるべきで、調査を行う側は、独立した専門家が分析を再現できるよう、データの信ぴょう性と出所を文書で示すべきだとしている。

Text by 山川 真智子