突然の「残業代帳消し」「契約終了」…コロナで失業したスイスで働く日本人たち

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 失業保険には申請した。当局が手続きに手間取っているようで、受領は始まっていない。こつこつ貯めてきたお金を崩して生活していたものの、底をついてしまった。頭の中が真っ白になったが、知人などからなんとか援助を受けることができ、いま、日々の食料を買うことはできている。医療保険などの公的負担は、支払いを待ってもらっている。いわゆる生活保護は、これから申請する。

「いまはコロナ禍だということもあり、手続きの多くがオンライン化されています。私は、コンピュータ、プリンタやスキャナーなどの機器がある(自分の所有品を友人宅に持ってきた)ので、いろいろ進めることができますが、持っていない人もいるはずです。そういう人たちは大変だと思います。また、公的な手続きの書類には難しい表現が使われていることが多いため、外国語の力が十分でない就労者や失業者は困ることが多いと思います」

◆別の分野で再就職を目指す
 緑さんは日本に帰る気持ちはない。いま経済的につらい状況とはいえ、語学力が高く、着実に仕事の経験を積んできたため、ずっと夢だったハードルの高い職種に就けるよう挑戦していくという。また、収入にはつながらないが、自分のように困っている人たちの役に立ちたいとサポート活動を立ち上げようと考えている。

「知人で、コロナ禍のために命を絶った人がいます。私も自殺してもおかしくない状況といえるかもしれません。でも、すべてを試練だと受け止めて生きていこうと思っています」

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Text by 岩澤 里美