突然の「残業代帳消し」「契約終了」…コロナで失業したスイスで働く日本人たち

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 美月さんは、それでも折れることなくサインしなかった。尽くしてきた従業員に真っ先に不利益を与えようとすることに本当にがっかりした。そして、その日から2週間が経った日、解雇を言い渡された。結局、夏に退職することになった。

 ロックダウン後に働いた分の給与は払ってもらえた。最後まで消化しきれなかった残業時間も、念を入れるようにして「精算しなくてもいいでしょうか」と聞かれたが要求し、無事、払ってもらうことができた。

◆レストラン以外の道がある
 不当な条件をめぐって失職することにはなったが、美月さんは「いまは、あのタイミングで辞めさせてもらったことを感謝しています。会社への不満が募っていたし、そう思いながら働き続けている自分も嫌でした。いまこうして自分を見つめるきっかけができて、改めて一度きりの人生を大事にしようと思います」と語る。

 現在、美月さんは、失業手当(給与の70%)を受給しながら、受給の条件の就職活動(毎月10件に履歴書を送る)を続けている。今度は和食以外のレストランやケータリング業でも働けるチャンスがあるかもしれないし、自分で飲食関係の事業を起こしてみるのもよいかもしれないと考えている。

Text by 岩澤 里美