突然の「残業代帳消し」「契約終了」…コロナで失業したスイスで働く日本人たち

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◆緑さん 私立学校から契約終了を告げられた
「コロナ禍のためとはっきりと告げられたわけではなかったので、コロナ禍が理由ではなかったかもしれません。でも、おそらくそうだと思います」と話すのは、緑さんだ。緑さんは家賃を払うことができなくなり、いまは友人宅に身を寄せている。

 緑さんは1年ごとの契約で、スイスの私立学校で教鞭を取っていた。私立学校ということで、教師たちが一丸となっていい学校にしていこうという気風が漂っていた。ほかの教師との関係はとてもよく、事務員たちとも、そして校長とも良好な関係が続いていた。緑さんは異文化圏での教授経験が長く、この学校でも生徒たちからの評判はとても高かったという。

 変化の始まりは今春のロックダウンだった。学校全体で授業時間を減らすことになり、緑さんの担当分も休講にするため休むようにと学校から通知を受けた。ロックダウンが解除されたら復帰するはずだった。しかし、復帰するころに体調が思わしくなくなり、医師から仕事を休むようにと診断書が出された。学校側は急きょ、緑さんが戻ってくるまでの期間のために別の教師を雇った。

 その代替教員は学校関係者で、緑さんが間接的に知っている人だった。学校関係者ということで、学校の規定により緑さんに比べて安い報酬で働くことは緑さんにはわかっていた。また、代替教員は学校のすぐ近くに住んでいるが、緑さんは公共交通機関で遠距離通勤していた(交通費は支給されていた)ため、緑さんが新型コロナウイルスに感染したりウイルスを運ぶかもしれないリスクを考えても、学校側にとって代替教員は好都合だったのかもしれない。

Text by 岩澤 里美