仏のマスク狂騒曲 政府の「不要」「不足しない」崩れ、国民大混乱

Gonzalo Fuentes / Pool via AP

◆10年で14分の1になった備蓄
 フランスアンフォ(3/22)は、複数ある要因のうち、2013年SGDSN国防国家安全総務局が備蓄の在り方を定義しなおしたこと。それと同時に、病院や医院用のマスクの備蓄が各施設の管理するものと定められたことをあげている。また、フランス・アンテールは、2007年創設された「衛生緊急事態への準備と対応機関」が2016年解体されたことも大きいと見ている。

 これらの10年の変遷と事実については、さらなる調査が必要だろうが、これらの事実はフランス人にマスクの重要さを意識させることになる。3月後半はマスクに関するニュースが引きも切らず報道された。地方の町役場が、屋根裏や地下室に眠っていた10年前のマスクを見つけて医療機関に提供した話(DNAアルザスニュース、3/20)や、織物工場の布製マスク製造(Actu.fr、3/22)、3Dプリンターのマスクづくりへの取り組み(BFMテレビ、3/23)が話題にのぼり、中国がイタリアに贈ったマスクがチェコで横取りされた話(20minutes、3/22)や、フランス政府が中国に発注したマスクがアメリカに高値で買い取られかけたニュース(20 minutes、4/1)なども流れた。

◆国立医学アカデミーがマスク着用を推奨
 そういう空気のなかで、きわめつきとなったのが4月3日に国立医学アカデミーが出した声明である。このなかで、国立医学アカデミーは、「Covid-19感染病に直面し、(マスク着用は)台湾、シンガポール、韓国での感染の拡大減少に寄与した」と考え、「外出制限令施行中および解除の過程において、一般市民全員にマスク(もしくは代用となるもの)着用を義務とすることを推奨する」と明言したのである。

 これを受け、フランス厚生省保健責任者ジェローム・サロモンも同日、医療用ではない「代用マスク」の生産について言及し、「一般市民が望むのであれば、現在生産中の代用マスクの着用を勧める」と述べた(ル・モンド紙、4/4)」。

 これまでの政府見解と正反対なこの発言には誰もが戸惑ったが、話はこれで終わったわけではない。

次のページ マスク着用義務付けを考える市長たち




Text by 冠ゆき