エチオピアの通信自由化とモバイルマネー「Telebirr」開始

アビィ・アハメド首相|Alexandros Michailidis / Shutterstock.com

◆Telebirrが独占のモバイルマネー
 アフリカにおける通信事業者にとって、モバイルマネーは重要な収益源だが、今回取引された通信ライセンスからはモバイルマネーに関するものは除外されていた。結果、ライセンスの入札価格を5億ドル引き下げたとアハメド首相は発言。モバイルマネーに関しては、まずは自国での知見を育てるという方針だ。

 そして先月、国営エチオ・テレコムのモバイルマネーTelebirrがロンチ。開始からわずか1週間で、100万人以上がTelebirrに登録した。以前にもモバイルマネーは存在していたが、その登録者数は、2015年から2020年までの5年間の累計で150万人程度であった。エチオピアの人口は1.1億人で、アフリカではナイジェリアに次ぎ、2番目の規模。エチオ・テレコムは初年度で登録者数2100万人を目標としており、5年後には3300万人にまで伸ばす計画だ。エチオ・テレコムの契約者数は昨年末時点で5070万人。CEOのフレヒウォット・タミル(Frehiwot Tamiru)は、5年以内にはエチオピアの年間経済生産の4-5割の取引がTelebirrのプラットフォームでの取引になるだろうと発言している(ロイター)。少なくとも1年間は、外資通信によるモバイル・マネー市場参入が禁止されているなか、Telebirrはほぼ独占状態で利用者を拡大していくことができる状況だ。

 フレヒウォットCEOによると、同社はサービスロンチの1年以上前にエチオピア中央銀行(National Bank of Ethiopia)に提案書を提出し、デジタル・フィナンシャル・サービス事業を進めるための許可を取得したとのことだ。Telebirrのプラットフォーム開発を担当したのは、中国のテクノロジー企業ファーウェイ(Huawei)。同社によると、開発プロジェクトを約5ヶ月という短期間で完了させた。現在の取引プロセス能力は1秒あたり100取引だが、1000取引にまで拡大することが可能だという。現在19ヶ国、1億5200万人が、ファーウェイが提供するモバイルマネーのシステムを使用している。アフリカにおけるモバイルマネーの代名詞であるサファリコムのエムペサ(M-Pesa)もファーウェイのシステムが基盤となっている。

 実際、Telebirrのプロダクトとサービスはエムペサに非常に似ているようだ。携帯番号を使って入金、送受金、支払いといった取引ができる。ショップでQRコードを読み込んでキャッシュレスの買い物をしたり、Telebirrのエージェントを通じて現金を引き出したりすることも可能だ。Telebirrはスマートフォンのアプリでの利用のほかに、USSD(Unstructured Supplementary Service Data、テキストベースのメッセージ交換技術)を使った取引にも対応。プロダクトは、アムハラ語、オロモ語、ソマリ語、ティグリニャ語、英語の5言語で使用できるようになっている。

 人口の75%が銀行口座を持っていないエチオピアにおいて、モバイルマネーの普及には期待がかかる。取引だけでなく、今後はローンなど新たな金融商品へのアクセスも期待できる。今回、エチオピアにおける通信ライセンスを取得したコンソーシアムに参加するサファリコムのエムペサも、モバイルマネー解禁後は積極的に市場を拡大することが予測される。エチオピアの通信とモバイルマネーの市場自由化にともなう、新たな経済効果やビジネス機会に期待がかかる。

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Text by MAKI NAKATA