英国版「Go Toイート」に上がった批判の声

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◆余裕のない人には無縁、効果も長続きしない?
 しかし、批判的な意見もある。学術ニュースサイト『カンバセーション』に寄稿したオックスフォード大学のトビー・フィリップス氏は、そもそも8月初めまでには人々は外食に出かけ始めており、キャンペーンの必要性があったかどうかは疑問だとしている。特定の曜日を対象としたことで、数字的には成功したかに見えるが、9月初めの外食は8月初めより増えているものの期待したほどではなく、結局持続的なインパクトは与えることができていないとした。

 このキャンペーンが不平等だという見方もある。英財政研究所のケイト・スミス氏は、割引でもレストランで食事ができない貧しい人がおり、このキャンペーンはある程度所得の高い人だけが潤うものだったのではないかと述べる。実はイギリス政府は旅行、雇用、インフラなどにさまざまな救済キャンペーンを企画している。どこの政府も負債や借り入れを増やしてでも、経済状況の悪化を避けなければならず、難しい決断を迫られているが、結局そのツケは後日増税や公共サービスの削減となって国民に回ってくると同氏は指摘している。イギリス式は人々に消費を奨励し、落ちたお金で経済を回していこうとするスタイルだが、失業や給与カットで苦しむ人々のことも忘れるべきではなく、その点ではアメリカ式の給付金のほうが優れているとした(経済ビジネスサイト『マーケットプレイス』)。

◆外食で感染拡大か? 経済回復への焦り
 このところイギリスの新型コロナ感染者数が再び増加しているが、フィリップス氏は「Eat Out to Help Out」がこれに寄与した可能性があると述べる。確かな証拠とは言えないが、陽性率の急上昇が9月初めから見られており、これは8月中旬に感染したことを示すものだと指摘。10ポンド、週3日の割引で人が集中したことによる影響は一考に値するのではないかとしている。米疾病予防管理センター(CDC)の調査でも、レストランを訪れた人のほうがそうでない人の2倍の確率で新型コロナ検査陽性となっていると報告されている。

 同氏は、キャンペーンは困っているホスピタリティ産業にお金を回すにはよい策だったが、安全な行いや人が集まらない方法を定着させないまま短期で元に戻すことは好ましくないという考えを示している。

 日本ではその是非が問われたGo To トラベルに続き、飲食業界支援のためのGo Toイートが実施される見通しだ。現在感染状況は落ち着いているとはいえ、感染拡大につながったと言われないよう、政府には慎重なルール作りや国民への啓蒙が求められる。

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Text by 山川 真智子