メタバース空間で「リアルな」語学学習 Immerse(イマース)が提供するVRプラットフォーム

海外でのプレゼンやスピーチの練習にも。プレゼン会場でピッチ練習をする場合はこのようなシーンが利用可能。(写真/Immerse提供)

 バイリンガルへの憧れは、日本人固有のものではない。今も昔も多くの人の憧れであり、学習手段もたくさん生み出されてきた。なかでも現地に赴く「留学」は、最も効果の高い手法だと考えられている。一方、金銭的な負担の大きさや、物理的・時間的な拘束が求められることで、誰もが利用できるというものではない。こうした語学学習に関する「需要」と「課題」に取り組んだ、最も新しいプログラムの一つが、「Immerse(イマース)」が提供する、「バーチャル空間(メタバース)を利用した言語学習プラットフォーム」だ。

◆難民たちの課題解決がきっかけ
 米国カリフォルニア州のスタートアップ「イマース」は、低価格で、よりリアルなシチュエーションのなかで言葉を学ぶことができる場所として、「バーチャル空間(メタバース)」を見出した。

イマースが今年リリースしたコマーシャル

 最高経営責任者(CEO)で創業者であるクイン・テイバーさんは、中東や東欧の難民保護活動に従事する両親を持ち、幼い頃から世界中を旅して育った。米国で高等教育を受け、自身も中東問題の解決に取り組むプロジェクトに関わり、現地で出会った難民たちや、支援者たちとの対話をしてきた。そのなかで、「英語」を使ったコミュニケーションが取れないことが、より良い教育を受ける機会を阻害し、国際社会における彼らの立場をますます弱いものにしていることに気がついたという。

 英語を学びたいのに学べない難民たちにとって、まず初めに解決しなくてはいけないことが、教師の確保だった。こうして、将来社会起業家を目指していたテイバーさんは、語学教育の分野で中東問題へアプローチすることを考えるようになった。そこでいよいよ社会環境が整いつつあったバーチャル空間を利用して、学習プログラムを提供するために2017年、イマースを立ち上げた。

Text by 寺町 幸枝