お気に入りのジーンズが、クローゼットにたどり着くまでに世界中を旅していることを、私たちはあまり意識しない。綿花農場を経て、染色工場、ウォッシュ加工場、縫製工場へ。デニムは、まだ誰にも穿かれていない段階から、ストーンウォッシュやサンディング、薬剤による色落ち加工、レーザー加工などを施され、“長年穿き込まれた風合い”を与えられていく。

その工程では、大量の水やエネルギー、化学薬品が使用される。ファッション産業が世界有数の温室効果ガス排出産業のひとつとされる中、デニムがサステナビリティの議論の中心に置かれ始めているのも、そうした背景からだ。

デニム加工施設「BPD Washhouse AP Photo / Seth Wenig

近年、多くのブランドが「サステナブルなデニム」を打ち出している。リジェネラティブ・コットン(環境再生型農法による綿花)、リサイクル繊維、水使用量を抑えた製造技術——。だが、その言葉が本当に何を意味しているのかを見極めるのは簡単ではない。そもそも“サステナブル”という言葉自体、明確な定義が存在するわけではなく、共通基準もないからだ。

先週、中国発のファストファッション大手SHEINが、透明性とサステナビリティへの取り組みで知られるEverlaneを買収した。このニュースは、ファッション業界が抱える矛盾を象徴している。持続可能な製造工程にはコストがかかる一方で、低価格かつ高速生産を前提とするビジネスモデルとの両立は難しい。消費者は、農業、化学処理、労働環境、価格といった複雑な要素のあいだで判断を迫られている。

専門家たちは、「本当にサステナブルなデニム」を見つけるには、まずジーンズがどのように作られているかを知ることが重要だと話す。

すべては綿花栽培から始まる。多くのジーンズはコットン製だが、その栽培には大量の水や肥料、農薬が必要になる場合がある。

非営利団体Textile Exchangeのチーフ・インパクト・オフィサーであるベス・ジェンセンによれば、多くのブランドはいまだに、自社製品に使われる綿花の産地を完全には把握できていないという。デニム生産は複数の国やサプライヤーをまたぐため、労働環境の追跡も困難だ。

「業界全体として、まだ道半ばです」と彼女は語る。

ファッション業界による環境負荷への懸念が高まる中、一部ブランドは“リジェネラティブ・コットン”へと目を向けている。土壌環境や生物多様性を守り、化学薬品の使用を減らす農法だ。しかしジェンセンは、カリフォルニアで可能なことが、そのままインドやオーストラリアで実現できるわけではないと指摘する。気候条件が異なるからだ。

収穫された綿花は糸へと紡がれ、染色される。デニム特有のインディゴ染めには、多くの水と化学処理が伴う。その後、生地として織られ、裁断・縫製されてジーンズになる。

ニュージャージー州のデニム加工施設「BPD Washhouse」で、手作業によるダメージ加工を施すブライアン・モラレス・イバラ。背後には、オゾン加工機が並ぶ。 AP Photo / Seth Wenig

しかし工程はそこで終わらない。色落ちやアタリ、ダメージ感を出すために、さらに“仕上げ加工”が施される。

ニュージャージー州の加工場BPD Washhouseを営むビル・カーティンによれば、デニム加工には「ウェット」と「ドライ」の二種類がある。

ウェット加工では、水や化学薬品を使ってデニムを洗い、色味を薄くしたり風合いを変えたりする。かつては、履き古したようなストーンウォッシュ感を出すために軽石が使われていた。メキシコから輸送されるその石は、輸送コストや排出量の増加にもつながっていたという。現在では、多くの工場が酵素を用いた加工や、水使用量を抑えたオゾン技術へ移行しつつある。

ニュージャージー州ジャージーシティのデニム加工施設「BPD Washhouse」で、手作業によるダメージ加工を施すブライアン・モラレス・イバラ。 AP Photo / Seth Wenig

一方、ドライ加工では、擦れやヒゲ、ダメージなどを手作業やレーザー技術で加えていく。カーティンは、レーザー加工のほうが効率的で労働負荷も少ないと話す。

また、ストレッチデニムにはポリエステルやポリウレタンなどの合成繊維が含まれることも多い。これらは化石燃料由来であり、着用や洗濯によってマイクロプラスチックを排出する可能性がある。

それでも、“持続可能なデニム”を作ることは容易ではない。

ファッションデザイナーのマリア・マクマナスは、自身のローインパクトなブランドに長年デニムを取り入れたいと思っていたが、納得できる方法が見つからなかったという。問題は常に“ウォッシュ加工”だった。

「水や化学薬品の観点から見ても、とても侵襲的なんです」と彼女は話す。

そこで彼女は、日本製のダークな生デニムを採用した。インディゴ染め、最低限の加工。そしてウォッシュ工程自体を省くことで、一般的なジーンズに見られる色落ちやダメージ加工を避けた。それは意図的な制限であり、彼女は長年その姿勢を貫いてきた。

転機となったのは、大手デニムブランドAgoldeとのコラボレーションだった。親会社Citizens of Humanityとともに、リジェネラティブ農法への取り組みで高く評価されているブランドだ。

その協業によって、マクマナスは小規模ブランド単独では築けなかったインフラへアクセスできるようになった。リジェネラティブ農家との接点を持つコンサルティング機関、石油由来ではなく生化学由来の染料を用いたインディゴ染色工程、そして厳格なサプライチェーン管理。

しかし彼女は、それでも簡単な話ではないと語る。有機栽培やリジェネラティブ農法による綿花は不作になることもあるし、サプライチェーンの透明性を担保するのも難しい。

「“今年は収穫が失敗しました”と正直に言ってくれる時点で、そのサプライヤーを信頼できるんです」と彼女は言う。「本来なら、普通のコットンに切り替えても誰にも分からない。でも、そうしない。その誠実さが分かるんです」

当然ながら、そこには価格も反映される。彼女のブランドのジーンズは1本700ドル近い。少量生産ゆえのコストでもある。

「結局は、生産数の問題なんです」

ニュージャージー州ジャージーシティのデニム加工施設「BPD Washhouse」で、サンプルを確認するオーナーのビル・カーティン。 AP Photo / Seth Wenig

では、最もサステナブルなジーンズとは何なのか。

専門家たちは、“サステナブル”という曖昧な言葉だけを信じるのではなく、ブランドが素材調達や生産背景についてどれだけ具体的に説明しているかを見るべきだと話す。

ファッションアドバイザーのダナ・デイヴィスは、単一商品の説明ページだけではなく、そのブランド全体が労働環境や製造背景、素材についてどう向き合っているかを見ることが重要だと語る。

「なぜその取り組みをしているのかを、きちんと説明しているブランドなら、“これは本物かもしれない”と感じられるはずです」

一方で、“グリーンウォッシュ”——実態以上に環境配慮をアピールする行為——が、消費者の判断を難しくしているとも指摘する。

認証制度も判断材料にはなる。ただし、どんな認証も“完全なサステナビリティ”を保証するものではない。たとえばB Corp認証は、企業の社会的・環境的パフォーマンスを評価する指標として知られている。また、ジーンズに混紡されることの多いリヨセルなどの木材由来繊維については、FSC(森林管理協議会)の認証を受けた森林から調達されている場合もある。

しかし、デニムによる環境負荷を減らすもっともシンプルな方法は、実はとても地味だ。

買う量を減らすこと。長く穿くこと。洗濯回数を減らすこと。そして古着を選ぶこと。

Levi Strauss & Co.のライフサイクル分析によれば、もしアメリカ人の10人に1人に相当する3420万人が、今年新品ではなく古着のジーンズを1本購入した場合、約15億ポンド(約70万トン)の二酸化炭素排出削減につながるという。これは、およそ15万台のガソリン車が排出する量に匹敵する。

「もっともサステナブルな行動は」とジェンセンは言う。

「すでに存在しているものを使い続けることなんです」

By KIKI SIDERIS Associated Press