メタバース空間で「リアルな」語学学習 Immerse(イマース)が提供するVRプラットフォーム

海外でのプレゼンやスピーチの練習にも。プレゼン会場でピッチ練習をする場合はこのようなシーンが利用可能。(写真/Immerse提供)

◆バーチャル・リアリティが語学学習に生み出すメリット
 イマースは、こうしてバーチャル空間内でできる語学学習の可能性を、技術開発と合わせて進めていった。最初に彼らのプログラムを導入したのは、学校ではなく大手企業。語学研修を行うということ以上に、バーチャル空間を利用して、物理的や心理的に距離を持った人たちのコミュニケーションの機会を創出し、チームビルディングの研修場所として利用したのだという。

 その後語学学習についても、専門家と研究を進めるなかで、彼らが提供するVR(仮想現実)学習環境を日本の私立高校や大学が導入し始めた。パンデミックのなかで2021年、メタ社が販売するVRゴーグル「メタ・クエスト」の公認アプリに導入されたイマースは、一気にその名が知られるようになっていく。

1ヶ月43.99ドル(約6550円)で40分の授業が8クラスまで受講可能。1レッスン5.50ドル(約820円未満)で授業を受けられる。語学学習アプリ「Duolingo(デュオリンゴ)」の調べでは、日本語は世界で5番目に「習いたい言語」だという。(写真/Immerse提供)

 コロナ禍で、世界中が「オンライン・レッスン」へ傾倒していったが、イマースが用意するバーチャル空間と、ZOOM(ズーム)やTEAMS(チームズ)のような通常のオンラインプラットフォームを使ったものと大きく異なる点は、その「リアル感」だ。

 たとえば、空港での荷物検査のやりとりや、カクテルパーティーでの対話のシーン。広い会場でプレゼンテーションを行う場合といったように、「具体的なシーン」に合わせて、先生や生徒が衣装を変え、小道具を使うことで、よりいっそう現実的なシチュエーションを構築。そこで必要な会話や対話を学ぶことで、より実践的な言葉を学ぶことが可能だ。

具体的なやりとりを、生徒も教師もアバターを変えることで実感できる。生徒はパスポートを実際に検査員役の教師に手渡しすることもできる。(写真/Immerse提供)

 さらに、「分身(アバター)」を使うことで、普段の自分とは違う自分を装うこともできる。アバター効果によって普段と違う自分を思い切り演出することができ、人によっては現実世界では控えめだけど、バーチャル・リアリティの世界では思い切った自己表現ができる人もいるという。

Text by 寺町 幸枝