震災被害のオフィス跡地がなぜ市民農園に? NZクライストチャーチ市民が学んだこと
2011年、日本で起こった東北地方太平洋沖地震とほぼ同時期、ニュージーランドの南島にあるカンタベリー地方がマグニチュード6.3の地震に見舞われた。前年の9月に続く2回目のこの大地震の影響で、中心都市クライストチャーチの商業・ビジネス地区では、6年以上が経った今でもさら地が目立つ。そんな中、町なかでは空き地を菜園に転換する動きが見られ、近隣エリアの活性化、市民の食料アクセス向上に一役買っている。
中でも、オフィスの跡地に来年前半誕生予定の「オタカロ・オーチャード」は、国内初の「アーバン・フードハブ」として注目されている。同市の人々が、自らの食料安全保障の確立のために、フードシステムを築こうと立ち上がったのだ。
◆被災直後も今も、重要な役割を果たすコミュニティガーデン
クライストチャーチ市民は、2つの大きな地震を経験して重要なことに気づいた。外部からの供給が途絶えると、スーパーマーケットなど店にある食品は3日ほどで尽きてしまうということだ。被災後、人々が新鮮な野菜や果物を求めて足を運んだのがコミュニティガーデンだった。人が集まれば、コミュニケーションが生まれる。地震で物的、身体的、精神的なダメージを受けた人たちはお互いをいたわり、励まし合った。コミュニティガーデンは、被災者の心のよりどころにもなったのだ。
一方、日常生活の上でも、コミュニティガーデンは今まで以上に重要視されている。近年、同地方の住人の約40%が、きちんとした食事をとることができない生活を強いられている。地震の影響だけでなく、所得格差と貧困の拡大が主な原因だ。新鮮で健康的な食品を誰もが手に入れることができるシステムの整備が求められていた。
◆プロジェクト実現に向かって、発揮される「ピープル・パワー」
オタカロ・オーチャードは、同市の食料安全保障を促進する団体、エディブル・カンタベリーが描いてきた構想、「エディブル・ガーデン・シティー」がもとになっている。クライストチャーチはもともと、丹精された個人の庭や公園の美しさから「ガーデン・シティー」という別名を持ち、国内はもとより世界中の人から愛されてきた。同団体は大地震の被災や社会的状況から、観賞用のガーデンだけでなく、市民の誰もが自由に採り、食べることができる作物を育てるガーデンの必要性を訴える。
エディブル・カンタベリーのピーター・ウェルズさんは、「オタカロ・オーチャード・プロジェクトの素晴らしい点は、政府、専門家、企業、一般人が一体となって進められているところ」と言う。2015年に約50の地元グループの200人に上る人々が、カンタベリー地震復興庁に創設を提案し、承認を得たのがはじまりだ。土地の利用については、政府と、年1NZドル(約80円)を支払う借地契約を結んでいる。昨年から建築家、エンジニア、建築会社スタッフ、活動家、パーマカルチャーの専門家などが週に1度集まり、実際に建設に着手した際に経済面、人材面、環境面で無駄が出ないよう、入念に準備が進められている。
同プロジェクトはすべて寄付や補助金で賄われ、税金が使われることはない。一般人や企業からの寄付金や、さまざまな助成金が集められ、昨年の段階で、資金は計36万5,000NZドル(約3,000万円)に上った。今年に入ってからはクラウドファンディングが行われ、目標額を超える成果を収めた。547人の支援者から6万5,000NZドル(約530万円)が寄せられたのだ。「『ピープル・パワー(人民の力)』なくしては、オタカロ・オーチャードの実現はあり得ない」というピーターさんの言葉は十分納得できる。
◆市民が不自由なく健康的な野菜や果物を入手し、集える場として
オタカロ・オーチャードは3ステップを踏んで、来年の3月ごろに完成する予定だ。初段階は「エディブル・パーク」と称され、菜園・果樹園を始める。単に作物を植え、育てるだけでなく、作物の育成法などのワークショップを開催する。次に、ソーシャルエンタープライズのカフェ、カンタベリー園芸協会本部、地元の食料情報を提供するインフォメーションセンター、イベント会場などを擁する「ローカル・フードハブ」の建設が続く。そして最後に、デンマークのサステナブルなデザインを取り入れた、半球体の温室、「ドーム・グリーンハウス」のできあがりで、設備面の準備は完了する。
7月には「プランティング・パーティー」と銘打ち、皆で苗を植えたり、種をまいたりする、最初の集まりが行われる。もちろん希望者は誰でも参加可能だ。野菜や果物はもちろん、ハーブや原生植物なども植えられることになっている。ピーターさんによれば、果樹などが根付き、実を実らせるのは3年先とのことだ。クライストチャーチ市民による未来への投資の第一歩が踏み出されようとしている。
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