中国とアメリカは台湾総統選の結果をどう見るのか 与党・頼清徳氏が勝利

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◆アメリカにとっての台湾総統選挙
 一方、アメリカは今回の選挙結果をどう見たのか。アメリカにとっては、今回の選挙で民進党が勝とうが国民党が勝とうが対中国というリスクではそれほど大きな違いはない。仮に親中的な国民党候補が勝利すれば、台湾と中国の関係は大きく改善するが、それはアメリカからすると中国の影響力が台湾を覆い、西太平洋をめぐる米中覇権競争が現実味を帯びてくることを意味する。中国の太平洋進出を警戒するアメリカからすると、国民党候補の勝利は歓迎できるものではない。

 よって民進党勝利を強く望んでいるかというと、そうとも一概には言えない。欧米との関係を重視する政党が実権を握れば、台湾が中国の太平洋進出を抑える防波堤となることを期待できる。しかし、その政権が独立路線を進めれば、焦りを強める中国が軍事行動を強行するリスクが飛躍的に高まることになり、中国との軍事衝突を避けたいアメリカとしては一つのリスクとなる。

 バイデン大統領も今回の選挙結果を受けて現状維持の重要性を示し、「台湾の独立を支持しない」と述べた。台湾の独立路線のリスクを十分に認識するバイデン政権は、民進党政権との関係を強化するが、中国を必要以上に刺激しないよう自制を呼びかけることもあるだろう。

 アメリカにとって、現状維持が軍事リスクの観点から最適で、その環境下で台湾への軍事支援を継続し、台湾を中国の海洋進出を抑えるうえでの防波堤として機能させておきたい狙いがある。

 米中双方で、今回の選挙結果の受け止め方は違う。しかし、双方とも米中の覇権競争のなかで台湾が最前線にある重要性を認識しており、今後もそのような存在としての台湾は続くことだろう。

Text by 本田英寿