台湾有事リスクの行方は? ポイントになる台湾総統選

中国の空母(左)を監視する台湾の軍艦(9月)|Taiwan Ministry of National Defense via AP

◆総統選挙は軍事リスクをどう変化させるか
 そして、今後の軍事リスクを占う上でポイントになるのが来年1月の総統選挙だ。現時点では欧米や日本など民主主義国家との関係を重視し、中国へ強い懸念を抱く民進党の候補者がリードしているが、中国との関係を重視する最大野党国民党の候補者が追い上げてきている。

 仮に、国民党の候補者が勝利することになれば、これまで懸念されてきた台湾有事をめぐるリスクは低下することになるだろう。中国の習政権は、台湾で独立に向けた動きが顕著になれば武力行使も辞さないとけん制してきたが、国民党政権の対中政策にそういった前提はないので、軍事リスクは極めて低くなる。

 一方、蔡英文政権の後継者が勝利すれば、その後の4年間の中台関係は不安定なものになり、軍事的挑発だけでなく、経済的威圧も仕掛けられるだろう。蔡英文政権の8年間、中台関係は冷え込み、中国はパイナップルや柑橘類、高級魚ハタなど台湾産の食品の輸入を突如一方的に停止した。

 現在、中国軍に台湾侵攻を円滑に行える能力はないとの見方が有力で、習政権としても失敗は許されないので、侵攻を決断する際は極めて慎重な判断となる。来月の選挙の結果によってすぐに軍事的リスクが高まるわけではない。だが、4年間という期間においてそれが否定できない状況は、決して楽観視できない。

Text by 本田英寿