台湾有事リスクの行方は? ポイントになる台湾総統選

中国の空母(左)を監視する台湾の軍艦(9月)|Taiwan Ministry of National Defense via AP

 今年、ウクライナ情勢ではウクライナ軍が一気に攻勢を仕掛け、ロシア軍が両国国境沿いに後退していくのではとの期待もあった。しかし、ウクライナ軍の勢いにも陰りが見え始め、ロシアは粘る形でそれをはねのけ、来年には逆に攻勢を仕掛けるぞという構えに見える。一方、台湾情勢をめぐっては大きな緊張は走らなかったが、中国軍機が事実上の境界線となる中台中間線を超え、台湾の防空識別圏に侵入することが常態化し、依然として緊張が続いている。

◆常態化する軍事的挑発 有事へ備え
 昨年8月初め、当時のペロシ米下院議長が台湾を訪問したことをきっかけに、中国は台湾本土を囲むように周辺海域で大規模な軍事演習を行い、大陸側からは複数の弾道ミサイルを発射した。そのうち一部は日本の排他的経済水域(EEZ)にも落下した。それ以降、同程度の軍事的緊張は走っていないが、中国軍機などによる軍事的挑発は毎日のように続き、すでに常態化している。中国公船による尖閣諸島の領海侵入と変わらない。

 そして、台湾当局は国防費を大幅にアップし、国防力の増強を進めている。男性の兵役期間が4ヶ月から1年に延長され、女性の国防参加も柔軟になり、市民の間でも避難訓練や軍事訓練を受講する動きが広がるなど、台湾社会全体で有事への備えが着実に進んでいる。2023年の台湾情勢は、一種の準備期間の1年だったとも表現できるだろう。

Text by 本田英寿