「権威主義」と「民主主義」の対立、それぞれの国の思いとは

会談に臨むバイデン米大統領と中国の習近平国家主席(15日)|Doug Mills / The New York Times via AP

 今年の世界の安全保障の焦点は、前年に続きウクライナと台湾だった。しかし、10月にイスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスとの戦闘が激化して以降、その主軸は中東に移り、ウクライナと台湾への世界の注目は薄れていった。そのなか、権威主義と民主主義国家の対立は先鋭化しており、来年はよりいっそうその対立に拍車がかかるかもしれない。

◆ロシアと中国は今何を考えるか
 今ごろ、権威主義国家のロシアと中国は何を考えているのだろうか。ロシアはウクライナへ侵攻し、中国は周辺海域を中心に現状打破政策を進めており、両国が権威主義国家であることに異議はないだろう。両国ともアメリカを中心とする国際秩序への挑戦を続け、現状変更を押し進めようとしている。

 ロシアのプーチン大統領は今ごろ、アメリカがイスラエル問題に深く関与せざるを得ない状況を待ち望んでいることだろう。ウクライナ戦争は膠着(こうちゃく)状態が続いているが、来年にはロシア大統領選があり、欧米のウクライナ支援疲れも顕著になるなか、ロシアとしては一つ大きな状況打開が欲しいところだ。来年秋にはアメリカ大統領選が行われ、アメリカ国民の間でもウクライナ支援の優先順位が低下するなか、プーチン大統領が一つ大きな行動に出る可能性もある。

 一方、中国の習近平国家主席は、アメリカのウクライナやイスラエルへの関与が、アメリカの台湾支援にどのような影響を及ぼすのかを注視している。中国としてはアメリカとの直接衝突は望んでいないが、アメリカが両国へ深く関与することで、台湾への支援が停滞していくことはむしろ都合が良い。中国が来年すぐに軍事侵攻に踏み切る可能性は極めて低いが、ほかの紛争にアメリカがどこまで介入し、それによって東アジア地域にどのような影響が出るかを注視している。

Text by 本田英寿