インドは「バーラト」に? 過去に国名を変更した国の理由は

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◆過去の国名変更の事例とは
 国の名称変更は頻繁に行われるものではないが、昨今、いくつか事例があった。たとえば、モザンビークと南アフリカと国境を接する、アフリカ大陸南部の小国、エスワティニは2018年4月に国名をスワジランド王国からエスワティニ王国へと変更した。変更にあたって国王ムスワティ3世には、植民地の過去から完全に切り離すこと、そして英語表記にした際のSwazilandとSwitzerland(スイス)の違いを明確にするという狙いがあったようだ。変更のコストは、600万ドル(現在のレートで約8.9億円)であったと推計されている。

 植民地の過去からの断絶という例で言うと、ジンバブエは1961年に現在の名称となったが、それまではイギリス植民地政府の政治家であったセシル・ローズ(Cecil Rhodes)にちなんだ、ローデシアという名称が使われていた。また2019年には南アフリカは東ケープ州の都市名が、ポート・エリザベスという英語名から、現地の民族の伝統を重んじたグェベーハ(Gqeberha)へと変更された。また最近では、2022年6月には、トルコが英語の国名表記を「Turkey(ターキー)」から「Türkiye(テュルキエ)」へと変更するように要請した。一方、現地ではすでにTürkiyeとう名称が使われていたため、これは厳密には名称変更ではないようだ。

 ちなみに日本の国名についても、現地の読み方でニホンとニッポンの2通りがあり、英語でもJapanとNipponという2種類が存在している。英語圏においては、Japanという表記が定着してはいるが、Japanのルーツも定説はなく、今後、この英語表記名が政治的な意図で変更される可能性もゼロではないのかもしれない。

Text by MAKI NAKATA