中国・習近平氏はなぜG20欠席を決断したのか?

インドのモディ首相(左)、中国の習国家主席(2016年10月)|Anupam Nath / AP Photo

 インドの首都ニューデリーで主要20ヶ国・地域首脳会議(G20サミット)が開催されたが、中国の習近平国家主席が欠席した。G20サミットをホストしたインドは中国に対して冷ややかな態度を示しており、今後両国の関係がいっそう冷え込むことは避けられない状況だ。これについてアメリカのバイデン大統領も会議前に失望したと表明。高まる米中間の緊張をいかに抑えるかという意味で重要だった対面の機会がなくなったことで、両国関係の先行きが非常に懸念される。なぜ習国家主席はG20サミット欠席という決断を下したのか。

◆アメリカや日本へのけん制 日米の反応をみる
 最大の目的はアメリカや日本をけん制し、日米の反応をみるためだ。バイデン政権は昨年10月、中国による軍事転用を防止すべく先端半導体の対中輸出規制を開始し、今年1月に先端半導体の製造装置に強みを持つ日本やオランダに対して同規制に加わるよう呼びかけた。そして、日本は7月下旬から先端半導体関連23品目で中国向け輸出規制を開始し、オランダも9月からそれに続いた。習政権はそれに対して猛烈な不満を抱いている。また、台湾情勢において米中の溝は深く、アメリカは台湾への防衛協力を積極的に進め、中国軍は台湾への軍事的威嚇を常態化させている。

 今回の欠席について、習国家主席は今のままでは会談しても平行線で終わり、何も生産的なことがないと確信したのだろう。そして、中国の不満を欠席という形で内外に示し、その後アメリカや日本がどのような反応を示すかを見極めようとしている。今回の件でインドも中国へ冷ややかな視線を送っているが、中国の狙いはあくまでもアメリカや日本であり、インドに対する不満などは比較的少ないように思われる。

Text by 本田英寿