日本への認識を変える中国

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 21世紀に入ってから政治、経済的に台頭し、すでに大国を自負している中国は、最大の競争相手であるアメリカとの軋轢を深めている。今から10年ほど前、国家主席になりたての習近平氏はアメリカを訪問して当時のオバマ大統領と会談した際、太平洋には中国とアメリカを受け入れる十分な空間があると、中国が太平洋で影響力を拡大していく意思を示した。それから10年、今日中国はアメリカと安全保障や経済、テクノロジーなどあらゆる領域で競争を繰り広げるようになり、アメリカに対しいっそう厳しい姿勢を取っている。そのようななか、中国は日本への姿勢も変えようとしているように映る。

◆台湾情勢が中国の対日姿勢を変える?
 まず、そう感じさせる理由の一つが台湾情勢だ。周知の通り、中国軍機の中台中間線越え、台湾の防空識別圏への進入は常態化し、台湾社会では市民が軍事訓練や避難訓練に参加する動きが広がり、アメリカは台湾への防衛協力を強化し、全体としての情勢は良くない方向に流れている。そして、それは米中の対立も先鋭化させている。今日、中国は何としても台湾を奪取し、そこを軍事拠点として太平洋に進出し、米軍を威嚇したいと思う一方、アメリカは何としても中国の太平洋進出を抑え、台湾をその防波堤にしなければならないと、互いに負けなれないプライドをかけた戦いをしている。

 その際、ポイントになるのが沖縄にある米軍がどう関与するかだが、この問題では日本は必然的に巻き込まれることになる。在沖米軍が台湾防衛に関与することになれば、中国としてはそれを食い止める行動に出ることになるが、そうなれば日中関係の悪化は避けられない。今日、中国としてはそれを想定し、日本を対立する相手として認識を変化させている。

Text by 本田英寿