静かに悪化する台湾情勢 ペロシ氏訪台から1年

空襲などに備えた避難訓練で地下に身を隠す台北市民(7月24日)|Chiang Ying-ying / AP Photo

 台湾情勢をめぐり、緊張の度合いを一気に高めることになったアメリカのペロシ前下院議長の訪台から1年となる。習近平国家主席を含め中国側は再三にわたってペロシ氏に台湾訪問しないよう釘を刺し、警告してきた。しかし、それが実現したことで、中国は台湾を包囲するような形で前例のない規模の軍事演習を行い、緊張がいかに高まっているかを強く示した。それから1年が経ち、同規模の対抗措置はみられないが、状況は静かに悪化の一途を辿っている。

◆有事に向けて変化する台湾社会
 台湾国防部が先月24日から5日間の日程で軍事演習を行ったなか、台北市中心部から30キロほどに位置する桃園国際空港では26日、中国人民解放軍によって襲撃されるという想定のもと大規模な軍事演習が行われた。桃園国際空港は台湾で最も利用客が多く、日本人も頻繁に利用する。同空港で軍事訓練が行われたのは今回が初めてとなったが、これは台湾政府が有事を現実の問題として受け止め、これまで以上に懸念を深めている証と言えよう。情勢がさらに緊迫化してくれば、軍事演習だけでなく市民の避難訓練の頻度も高まってくるだろう。

 台湾国防部は7月13日にも、中国の軍用機33機と艦船9隻が台湾周辺で軍事的にけん制し、軍用機のうち24機が中台中間線を越え、台湾の防空識別圏に進入したと発表したが、こういった活動はすでに常態化している。

Text by 本田英寿