中東で高まる中国の存在感

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 中東を取り巻く情勢が動くなか、最近ドバイに拠点を置くPR会社が発表した世論調査が注目を集めている。ドバイのPR会社「ASDA’A BCW」がアラブ18ヶ国の若者(18歳から24歳)3600人あまりに実施した調査の結果によると、中国を自国の友好国と考える若者は回答者全体の8割に達し、アメリカの72%を上回った。また、昨年実施された同じ調査でも、中国が78%だった一方、アメリカは63%にとどまり、中東の若者たちの間でアメリカより中国に対して好印象を抱いていることがわかった。

◆サウジとイランが中国の指導力で外交関係を復活させる
 この統計は近年の中東を取り巻く政治的構図をそのまま反映している。今年3月には、中東で覇権競争を展開するサウジアラビアとイランが中国の仲裁で7年ぶりに国交を正常化させると発表した。両国は、2016年のサウジアラビアにおけるイスラム教シーア派の宗教指導者の処刑、その後のテヘランにおけるサウジアラビア大使館襲撃などを受けて外交関係を断絶していた。その2国に対する中国の指導力が功を奏し、4月にもサウジアラビアのファイサル外相とイランのアブドラヒアン外相が北京で会談し、関係改善を進めていく方針を示した。

◆アメリカとの関係を再検討するサウジアラビア
 そして、アメリカでバイデン政権が発足してから、中東の親米国家の代表格だったサウジアラビアはアメリカへの疑念を強めている。人権重視のバイデン大統領は昨年10月にサウジアラビアを訪問したが、国内での石油価格高騰を抑える狙いでサウジアラビアに石油増産を打診したものの、その確約を得られなかった。

 記者殺害など人権面で問題のあるサウジアラビアは、人権問題で要求してくるバイデン政権への不信感を強めている。また、石油に依存しない経済の多角化を狙うサウジアラビアは、人権や民主主義など価値観に重きを置くアメリカのやり方に不満を強め、実利的な関係重視を狙う中国への接近を図っている。

Text by 本田英寿