アジア安全保障会議からも漏れるグローバスサウスの本音

アメリカ、ASEANの国防相(6月2日)|MINDEF via AP

◆グローバルサウスを意識した中国
 また、李氏は演説のなかで、「米中の問題は、両国だけでなく世界に影響を及ぼす」とも言及した。これはアメリカや同国の同盟国ではなく、会議に参加したグローバルサウスに属する国々を意識した発言と考えられる。会議にはインドネシアやマレーシアなどグローバルサウスに属する多くの国も参加した。中国は、こういったアメリカと一線を画す国々をいかに味方につけるか、またアメリカと距離を保たせるかを強く意識しており、そういった国々に接近することでアメリカをけん制する狙いもある。

◆シャングリラ・ダイアローグからも聞こえるグローバスサウスの本音
 そして、3つ目が筆者の最も意識していることで、それがシャングリラ・ダイアローグからも聞こえるグローバスサウスの本音だ。近年、グローバルサウスからは大国間対立への警戒や不満の声が絶えず聞こえる。

 最近でも、広島で開催された主要7ヶ国首脳会議(G7サミット)に出席していたブラジルのルラ大統領は、「ウクライナ戦争はG7で議論するべきではない、国連でやるべきだ」などG7とは一線を画す本音を示したが、今回の会議でもインドネシアのプラボウォ国防相は、米中対立を新冷戦と表現し、大国間対立の激化に強い懸念を示した。フィリピンのガルベス国防相も孤立やデカップリングなど大国間の諸問題に同様の懸念を示したが、こういったグローバルサウスの声はあちこちから鮮明になってきている。

Text by 本田英寿