世界で最も分断された北東アジア

韓国ソウルの地下鉄駅にて(5月29日)|Ahn Young-joon / AP Photo

◆大国間対立によって分断が進む北東アジア
 今日、米中対立の最前線と言えば間違いなく北東アジアになるわけだが、この地域には地域の一体性を確保するための政治的枠組みが存在しない。以前、北朝鮮の核開発問題を話し合う6ヶ国協議という、日本、韓国、北朝鮮、アメリカ、中国、ロシアが参加する政治的枠組みがあった。6ヶ国協議には、地域の問題を関連諸国が話し合って解決を目指すという地域協力が少なからず見えた。

 しかし、今日ほど6ヶ国協議が非現実的と言える時はないだろう。米中は台湾問題を筆頭にあらゆる問題で対立し、ロシアは侵略国家としてのイメージが先行し、北朝鮮は孤独政策を貫く。中国とロシアは結束を強化し、北朝鮮はそれに便乗して両国に接近しているが、3国間同盟などを作ろうとする動きはなく、それは利益の一致のみで動いている。

 今日、日本にとって朗報なのは韓国の尹(ユン)大統領の誕生だろうが、グローバルコリアを目指す尹政権の任期はあと4年であり、次期大統領の5年間で日韓関係が再び冷え込む可能性も十分にある。これが日本にとっての「韓国リスク」になるわけだが、北東アジアは6ヶ国協議の時に比べ多極化へ変貌しつつある。こういった事情を考慮すれば、今日北東アジアは世界で最も分断が進んだ地域と言え、欧州とはまさに対極にある。

Text by 本田英寿