世界で最も分断された北東アジア

韓国ソウルの地下鉄駅にて(5月29日)|Ahn Young-joon / AP Photo

 国際社会はいくつかの地域に分けられる。欧州、アフリカ、中東、南アジア、東南ジアや南太平洋、北米、中南米などがそれに当たる。そういった地域には欧州連合(EU)、アフリカ連合(AU)、アラブ連盟、東南アジア諸国連合(ASEAN)、太平洋諸島フォーラム(PIF)、南アジア地域協力連合(SAARC)など、地域の協力や一体性を確保するための政治的枠組みが存在する。しかし、そういった常設的な枠組みがない地域がある。それが北東アジアだ。

◆ロシアによるウクライナ侵攻から見える地域協力
 ロシアによるウクライナ侵攻には、地域協力という視点がある。侵攻以降、欧州ではロシアに対する警戒感が短期間のうちに高まり、特にロシアと距離が近い東欧や北欧諸国の間ではそれが顕著になった。ロシアと1000キロ以上にわたって国境を接するフィンランドは、侵攻後に国民のロシア脅威論が急激に高まり、北大西洋条約機構(NATO)加盟に向けてすぐに動き出した。そして、侵攻から1年たった今年4月、フィンランドは正式に31ヶ国目の加盟国となった。今後、スウェーデンの加盟も正式に決まる見込みだ。

 ここで見られるのは、欧州(欧米)の一体性である。突如侵略国家が現れても、それに脅威を感じた国々は、地域の一体性を確保する国際組織に加盟することで自らの安全保障を担保するようになった。ロシアによるウクライナ侵攻はさまざまな問題を生み出したが、欧州(欧米)の一体性、地域協力の重要性というものも顕著に示した。

Text by 本田英寿