尹大統領は「グローバル・コリア」を目指すか 日本の重要なパートナーになる韓国

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 5月7日から8日にかけて訪韓した岸田首相は帰国前、記者団に対して訪韓の意義を強調し、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領と信頼関係をさらに深め、力を合わせてともに新しい時代を切り開いていきたいと日韓の結束に強い意欲を示した。岸田首相と尹大統領の会談は3月下旬にも東京で行われ、今回極めて短期間での再会となった。英語で「shuttle(シャトル)」は「往復する」という意味だが、両者が望んでいた日韓シャトル外交はわずか50日あまりで達成されたことになった。

◆尹大統領のこれまで
 文在寅(ムン・ジェイン)前政権下で日韓関係は戦後最悪とも言われるまで悪化したが、昨年5月、文政権とは真逆な尹政権が誕生した。尹大統領は就任当初からアメリカや日本との関係改善に強い意欲を示し、対北朝鮮で日米韓3ヶ国の連携の重要性を強く指摘してきた。一方、岸田首相は尹大統領の誕生を歓迎すると指摘していたものの、近年冷え込んだ日韓関係もあり、まずは様子見の姿勢をまったく崩さなかった。つまり、日本は尹大統領の就任当時、ボールは韓国にあるとみなし、韓国がそのボールをどう投げるかを注視していた。

 そして、尹大統領は前政権ではまったく見られなかった行動を積み重ねていくことになる。昨年7月、尹大統領は岸田首相とともにスペイン・マドリードで開催された北大西洋条約機構(NATO)の首脳会合に参加した。日韓の指導者が同会合に参加するのは初めてだった。この際、スペイン国王フェリペ6世が主催する晩餐会で両者は初めて対面して4分あまり話し、尹大統領は岸田首相に日韓間の懸案事項を速やかに解決し、日韓関係を未来志向に進める考えを持っていると伝えた。

 両者は昨年11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)の際にも会談。こういった積み重ねが3月の東京での会談、そして今回のソウルでの会談につながり、まさにシャトル外交が達成されることになった。両者は今月広島で開催される主要7ヶ国首脳会議(G7サミット)でも、バイデン大統領を加えた日米韓の会談を行う予定になっている。

Text by 本田英寿