三極化する世界 高まるグローバルサウスの不満

岸田首相(左)とインドのモディ首相(3月20日)|Manish Swarup / AP Photo

◆ウクライナを訪問した岸田首相
 偶然だろうが同時期、岸田首相は訪問先のインドからポーランドを経由して列車でウクライナの首都キーウに向かい、ゼレンスキー大統領と会談した。岸田首相はロシアによるウクライナ侵攻を改めて非難し、ともに自由民主主義陣営として専制主義に対抗していく姿勢を示した。岸田首相はウクライナに殺傷能力のない装備品を支援するため3000万ドルを拠出するほか、エネルギー分野などでの新たな無償支援として4億7000万ドルを供与する考えを伝え、5月に広島で開かれる主要7ヶ国首脳会議(G7サミット)にゼレンスキー大統領を招待すると明らかにした。

 また、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は3月下旬、ロシアが中国に対して殺傷能力のある兵器の支援を要請した可能性が高いいくつかの兆候があると懸念を示した。最近中国による武器供与疑惑が相次いで指摘されているが、仮にこれが事実となれば欧米による中国への制裁が強化され、関係悪化に拍車がかかることは間違いない。

◆高まるグローバルサウスの不満
 一方、こういった大国間の争いにグローバルサウスの不満はいっそう高まっている。昨年も国連総会の場では、東南アジア諸国連合(ASEAN)やアフリカ連合(AU)から、グローバルサウスを大国間競争に巻き込むべきではない、ウクライナ戦争という大国による代理戦争が世界規模の物価高を誘発したなどといった、大国への不満が強まっている。今後は欧米や中ロとは距離を置く第三世界の拡大が再び顕著になる可能性もあり、そういった懸念から岸田首相はウクライナ訪問直前にインドでモディ首相と会談し、グローバルサウスを主導するインドと関係を強化する強い意気込みを見せた。米中対立が深まるなか、日本にとってはグローバルサウスとの連携がこれまでになく重要になっている。

Text by 本田英寿