衰退する欧米主導の世界 ロシアのウクライナ侵攻から1年

John MacDougall / Pool Photo via AP

 ロシアがウクライナに軍事侵攻してから2月24日で1年となる。ロシア軍をウクライナ国境に集めたプーチン大統領は、ウクライナの東部と北部の4ヶ所から一斉に攻撃を開始。侵攻が開始された24日だけでもウクライナで少なくとも50人以上が死亡、170人あまりが負傷したと報道された。侵攻当初は首都キーウの陥落も時間の問題だと言われた。

◆すぐに露呈したロシア軍の劣勢
 だが、その後の状況はまったく異なるものだった。アメリカなど欧米から軍事支援を受けるウクライナ軍は徐々に戦況で優勢となり、ロシア軍は首都キーウの掌握どころかロシア国境に近いウクライナ東部に追い込まれ始めた。兵士が脱走し、武器が不足するなどロシア軍の劣勢が顕著になっていった。プーチン大統領が昨年秋に軍隊経験者などの予備役を招集するため部分的動員令を発令し、ドネツク、ルハンシク、サボリージャ、ヘルソンの東・南部4州のロシアへの一方的併合を宣言したことはそれを物語る。

 今後、戦闘は春にかけて再び激化する見込みだ。ウクライナ国防省のブダノフ情報局長は米ABCニュースが1月に報じたインタビューで、ウクライナ軍は3月あたりに大規模な攻勢を仕掛けると述べており、またM1エイブラムスやレオパルト2など300を超える欧米諸国の戦車がウクライナに輸送される。一方、プーチン大統領は3月までに東部ドンバス地方の完全制圧をロシア軍に命じたとされる。戦況はロシア劣勢のままだが、プーチン大統領の野望は1年前から何も変わっていない。

◆疑われる対ロ制裁の効果
 一方、1年が経って顕著に見えるのが、欧米諸国、特にアメリカの影響力の衰退だ。侵攻直後、バイデン大統領はほかの国々を主導する形でロシアへの経済制裁、ウクライナへの軍事支援に踏み切った。しかし、ロシア政府は1月、2022年のロシアの原油輸出量が前年比7%増え、歳入は28%、2兆5000億ルーブル(約4.7兆円)分増加し、液化天然ガスの輸出量も8%増加したと発表した。欧米主導の対ロ制裁が効いているかどうか、これについてはいまだにはっきりしない。しかし、上述のロシア政府の発表が真実であれば、制裁の効果は極めて限定的で、欧米の影響力が衰退していることを示す一つの指標になるだろう。

Text by 本田英寿