2023年の世界はどうなる ウクライナ戦争、台湾情勢、世界の亀裂

ウクライナのゼレンスキー大統領(2022年12月20日)|Ukrainian Presidential Press Office via AP

 とはいえ、3期目となった習政権が今年、台湾侵攻という決断を下す可能性は現在のところかなり低い。まず、現時点で台湾有事を円滑に実行できるほど中国軍の能力は備わっておらず、かなりの苦戦を強いられるだけでなく、侵攻した場合の政治経済的ダメージも極めて大きい。台湾統一を習氏は強く掲げており、仮に武力侵攻で現在のロシアのような状況になれば、習氏への求心力は国民からだけでなく共産党内部からも低下する恐れがある。

 台湾では来年1月に、現在の蔡英文氏に代わる指導者が選出される総統選挙が行われる。習氏はどのような人物が選出されるのかと、その動向を注視するだろう。仮に蔡英文氏のイデオロギーや戦略を継承するような指導者が現れれば、リスクが大きくなるだろう。それを占う意味でも今年は重要な年になる。

◆「大国間競争」の世界とグローバルサウスの亀裂が広がる
 一方、ウクライナ情勢や台湾情勢など、大国間競争の世界と距離を置くグローバルサウスの動きも昨年以上に顕著になる可能性がある。既に、東南アジア諸国連合(ASEAN)やアフリカ、中南米などでは大国間競争に飽き飽きしている国も少なくない。今年はこういったグローバルサウスの不満や疲労、怒りの声が昨年以上に顕著に見られる可能性がある。

 大国間競争の狭間で難しい舵取りを余儀なくされる日本としても、グローバルサウスとどのように良好な関係を維持するか、その戦略も極めて重要な年になる。

Text by 本田英寿