反体制派弾圧、スパイ活動…中国の「海外闇警察」めぐる2つの懸念

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◆海外派出所のスパイ活動が強化される恐れ
 もう一つは、習政権が海外派出所を利用し、在外中国人の行動を監視するだけでなく、対立国の軍事・安全保障、最先端技術などに関する情報を入手する恐れだ。2022年はウクライナ侵攻の年だったと言えるが、米中間の亀裂も改めて浮き彫りになり、台湾情勢をめぐっては8月に大きな緊張が走った。

 また、経済安全保障をめぐっては、バイデン政権は半導体など最先端技術の分野で中国とのデカップリングを進め、同盟国・友好国との間のサプライチェーン構築を強化している。アメリカなどは最先端技術が軍事利用されることを懸念しているが、中国としては軍事・安全保障だけでなく、経済、貿易、技術覇権などでもアメリカに負けないよう、中国警察海外派出所の機能を多様化させてくる可能性がある。

◆海外派出所の活動を抑えられない国も?
 諸外国がどこまで国内で海外派出所の活動を抑えされるかはわからない。その活動の詳細が今後明らかになれば、まずアメリカは積極的にそれを排除していくだろうが、近年中国との関係が冷え込んでいたオーストラリアは昨今、経済や貿易面で中国との関係を改善させていく方針を打ち出すなど、欧米諸国のなかでも対中国で温度差が見られる。日本と同じように経済を中国に強く依存している国々も少なくなく、そういった事実がかえって弱みとなり、海外派出所の活動を十分に抑えられなくなる可能性もあるだろう。

 今後、海外派出所の活動は在外中国人の行動監視だけでなく、スパイ活動的な役割が強化されていくことになるだろう。特にそういった分野に疎い日本はこれまで以上に注意が必要だ。

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Text by 本田英寿