反体制派弾圧、スパイ活動…中国の「海外闇警察」めぐる2つの懸念

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 最近、中国政府が海外に在住する中国人を監視し、強制帰国させるために各国に設置している中国警察海外派出所の存在が国際的に物議を呼んでいる。スペインの人権団体「セーフガード・ディフェンダーズ(Safeguard Defenders)」は9月、中国政府が欧米諸国を中心に世界30ヶ国54ヶ所に中国警察の海外派出所を設置し、在外中国人の行動をチェックし、必要に応じて該当人物を帰国させる活動を行っていると発表した。そして、同人権団体は、海外派出所の活動は個人の人権や現地国の主権を侵害するだけでなく、すでに強制帰国させられた中国人は1万人に上り、強制帰国者の家族や親族、友人などが不当な扱いや嫌がらせを受けているとも警告した。

 これについて中国側は、在外中国人に対して運転免許証の更新や健康診断の受診など必要なサービスを提供しているに過ぎないと反論しているが、米連邦捜査局(FBI)のレイ長官は、中国警察がアメリカ内で活動していることはすでに承知済みで、アメリカの主権侵害にあたり断じて許されないと強い懸念を示している。

◆海外派出所の活動がさらに活発化する恐れ
 しかし、懸念はこれだけに留まらない。我々が懸念すべきポイントは二つある。一つは、既存の海外派出所の活動が来年以降さらに活発化する恐れだ。それを予感させるきっかけになったのが、ゼロコロナ政策に対する抗議活動だ。3期目をスタートさせた習政権は12月に入って、3年あまりにわたって敷いてきたゼロコロナ政策を大幅に緩和させたが、その直前に北京や上海、広州など国内各地だけでなく、東京やニューヨーク、ロンドン、シドニーなど世界各地でもゼロコロナ政策の緩和を求める抗議活動が一気に拡大した。

 これはゼロコロナによって中国人民が社会経済的不満を強め、反政権的な感情を抱いていることの何よりの証拠だが、これが明るみに出たことで習政権は反政権層への圧力を一層強化することになるだろう。中国国内であれば監視や締めつけを強化することは比較的簡単だが、海外であればそうではない。よって、在外中国人の行動を監視するため海外派出所の活動を一層強化する可能性がある。

Text by 本田英寿