威嚇エスカレートさせる北朝鮮 習近平政権3期目の対北政策は?

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◆北に過度に接近しないし、放ってもおかない
 このようななか、国連安全保障理事会は4日、北朝鮮による暴走を議論する緊急の会合を開催した。米国や日本などは北朝鮮を非難する声明採択を目指したが、中国、ロシアがそれに賛同しなかった。北朝鮮のミサイルをめぐってはこのような会合が幾度も開催されているが、結果は毎回同じようなものだ。そして、中国外務省は同日、「北朝鮮への制裁と圧力は問題解決の役に立たない。中国は北朝鮮との外交的な意思疎通を保っており、各国が誠意をある行動で歩み寄るよう望む」と発表した。

 中国も北朝鮮によるミサイル発射や核実験を良いことだとは思っていない。そこには政治的狙いや懸念がある。欧米が非難を強めるなか、北朝鮮の最大の擁護者・支援者である中国までもが北朝鮮非難に回れば、今後北朝鮮が何をするかわからないという懸念がある。仮にミサイル発射や核実験だけでなく、それ以上の行動に出れば国境を接する中国にも何らかの影響が出てくる。また、金政権の基盤が揺らげば移民や難民が中国に押し寄せる可能性もある。そういった懸念や中国への影響を考えれば、中国としても北朝鮮を挑発できないという政治的懸念がある。

 また、米中対立が激化するなか、中国にとって北朝鮮は緩衝地帯として重要だ。仮に北朝鮮と米国の国交正常化が進み、北朝鮮が米国寄りの動きを取れば、中国にとっては米国の勢力圏が中朝国境にまで及ぶことになりかねない。習政権としてそれは絶対に避けなければならず、北朝鮮が米国勢力圏の拡大を抑える防波堤であり続けるよう、政治・経済的バックアップをする必要がある。

 一方、露骨に北朝鮮への支援を強化すれば、欧米だけでなくほかの諸外国でも中国への不信感が高まる可能性があり、習政権としてそれはできない。こういった背景を考えれば、習政権3期目も北朝鮮に対して「過度に接近しないが放っておくこともしない」というスタンスを続けるだろう。

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Text by 本田英寿