習政権 異例の3期目で日中関係は悪化か 国民の不満のなか「神格化」強化へ

Ju Peng / Xinhua via AP

◆ゼロコロナによって高まる国民の不満
 異例の3期目自体に対する国民の不満も根強いと思われるが、近年は新型コロナウイルスの感染拡大に伴うゼロコロナ政策の徹底により、日常生活を普通に送れなくなった国民の政権への不満はかなり強いものがあるだろう。党大会直前でも、中国では上海市や深セン市などで新型コロナウイルスの感染が拡大し、多くの地域で学校、娯楽施設、観光地などが閉鎖されるなど抑え込みが強化された。10月以降感染者が増加した西安でも学校の対面授業が中止され、公共施設などが閉鎖され、天津や河北と北京を往復するシャトルバスも運行がストップした。中国国民のなかには、ゼロコロナ政策という口実で習体制が国民の自由を奪っているとの指摘も少なくない。

 こういった国民の不満の高まりは、習体制にとって最大の脅威であることは間違いない。クーデターのような事態が発生することは考えにくいが、これまでの慣例を覆す3期目となれば、習氏はこれまで以上に「象徴」になる必要性に迫られ、国民からの忠誠心を獲得しなければならない。台湾独立阻止、米国を追い抜くというビジョンを内外に示したことからも、習氏は自らの「神格化」を強化する必要がある。

◆高まる不満を対外強硬姿勢で逸らす
 このような状況のなか、我々は中国がどのような策を講じてくるかを注視する必要があるだろう。これまでの中国の出方を考えると、中国政府は国民の不満を逸らすため、対外政策においてよりいっそう強硬な姿勢で臨む可能性がある。対外関係で強硬な姿勢を示すことにより、国民の愛国心、政府への忠誠心を高めようとするのである。そうなれば、米中だけでなく、日中関係もその影響を受ける可能性がある。

 習氏は日中国交正常化50年に合わせて日本の岸田首相に祝電を送ったが、そのなかで新たな日中関係の構築を要請していた。新たな日中関係の中身はわからない。しかし、「大国中国に日本はどう向き合うのですか?」というシグナルが入っていると筆者は感じている。

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Text by 本田英寿