対ロ制裁は効いているのか
◆ロシアによる対抗制裁
ロシアはそれに対抗するため報復制裁を活発化させている。ロシアの国営会社ガスプロムはこれまで、ロシア通貨ルーブルでの支払いを拒絶したとして、ブルガリアやポーランド、フィンランドやオランダ向けのガス供給を停止した。欧州の多くの国はロシア産エネルギーに依存しており、ロシアはエネルギー資源を武器にすることで、こういった国々へ政治的圧力をかけている。
また、ロシアは関係が冷え込む日本に対しても圧力をかけ続けている。プーチン政権はこれまで、日本人と北方領土に住むロシア人との相互訪問を可能にする「ビザなし交流」などに関する協定を失効させ、北方領土へ進出する企業に対して20年間にわたって税金を優遇する措置を盛り込む法案を成立させた。また、北方領土周辺で漁業活動を行う日本漁船を拿捕しないことを約束した日ロ漁業協定の履行を停止すると発表するなど、次々に対抗措置を取っている。
また、最近では三井物産や三菱商事が出資する石油天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」では、両社はロシア政府が新たに設立したロシア企業に引き続き出資することを決定したが、日ロ関係が冷え込むなか、今後サハリン2に対して第2、第3の報復的措置が課される恐れもあり、エネルギー問題に苦しむ日本にとっては厳しい情勢が続きそうだ。
◆制裁の目的は何か
このようななか、中国やインドなどはロシア産エネルギーへの接近を図り、ロシアと中国、インドそれぞれの経済・貿易関係はむしろ緊密化しているとも言われる。そうなってくると、欧米主導の対ロ制裁の抜け道がいっそう拡大している可能性もあり、その効果はいっそう低下しているとも言えるだろう。
しかし、この問いで重要なのは、制裁の本来の目的は何かということだ。この制裁の目的は、簡単に言えば、ロシアに経済的圧力をかけることによって同国を苦しめ、ウクライナ侵攻を止めさせることにある。しかし、その目的は一切達成されてない。この観点に立って考えれば、欧米主導の対ロ制裁は効いていないことになる。一方、そうではなく、どれだけロシア経済がダメージを受けたかに立って考えれば、答えはいまだに不明と言えよう。
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