ブレア元英首相「西側は結束して中国に対応を」 語る世界の変曲点

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◆西側の結束に不可欠 政治に理性と戦略の回復を
 ブレア氏は、中国に対し西側諸国は結束して対応していかなければならないとしている。同氏は昨年も、西側と中国の間の緊張がここ数年で大きく高まっており、G7の民主主義国家はバイデン政権の下で同盟と強さを回復すべきと述べていた。(ポリティコ誌

 今回のスピーチでも同じ考えを示したが、そのためには各国が自国の政治を正していく必要があるとも述べた。ブレア氏は、イギリスでナイジェル・ファラージ氏(EU離脱を強力に煽動)やジェレミー・コービン氏(労働党党首時代に若者の強い支持を獲得)などが短期間でも政治に重大な影響を及ぼしたのはなぜなのか、アメリカが予防接種を受けたかどうかで政治的忠誠を示す国になったのはなぜだったのかと問い、政治における「狂気」を終わらせ、「理性と戦略」を取り戻すことが急務だと述べた。

 同氏は、西側諸国は新たな制度を構築しなければならない転換点にあると主張。国内政治は国民の目には機能不全に見え、外交政策は他国からは予測不能に見えており、どちらも西側民主主義の大義には役立たないと述べた。

◆西側が勝手に自滅? 中国メディアの見解
 ブレア氏が懸念する西側の国内政治の機能不全について、中国のグローバル・ニュース局CGTNは大きく同意する。ウクライナ紛争で、西側や北大西洋条約機構(NATO)は権威主義との戦いで団結していると自慢しているが、この団結は政治家レベルより下にはほとんど浸透していないと述べている。

 アメリカではインフレでバイデン大統領の支持率が低下し、環境優先のはずだったドイツはエネルギー危機に耐えられず火力発電所を再稼働。フランスでは国民に「無気力」感が広がるマクロン大統領の2期目が始まり、イギリスではスキャンダルのなかジョンソン首相が辞任。西側諸国は政治的にも経済的にも内部の混乱によって麻痺しているとCGTNは指摘し、ブレア氏の言う国際的なパワーバランスの変化は、中国の台頭というよりも、国内の整頓ができず市民のニーズに応えられない西側の衰退を意味するとしている。

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Text by 山川 真智子