EUに入りたい、ロシアとも親しくしたい…ロシアと天然ガス輸入契約のセルビア

ロシアのプーチン大統領(左)とセルビアのブチッチ大統領(2019年)|Darko Vojinovic / AP Photo

 ロシアのウクライナ侵攻に反対する西側諸国がガスや石油の輸入禁止に向かうなか、セルビアのブチッチ大統領は、ロシアのプーチン大統領との電話会談で、新たな3年間の天然ガス供給契約に合意したと述べた。旧ユーゴスラビア構成国のセルビアは歴史的にロシアとのつながりが強いが、欧州連合(EU)加盟も目指しており、ロシアとEUの間で立ち位置を決めかねている。

◆好条件で合意 対ロ制裁拒否と引き換えか?
 ブチッチ大統領は5月29日、セルビアにとって極めて有利な内容でロシアとの新しいガス取引に合意したと記者団に語った。セルビアはガス需要のほぼ全量をロシアに依存しており、同国の主要なエネルギー企業はロシア政府が過半数株を保有している。ロシア国営ガスプロムと交わしていた10年のガス供給契約は5月末に失効した。

 ブチッチ氏は民族主義的なミロシェビッチ大統領の元で大臣として頭角を現し、親EUを掲げて2017年に大統領に当選した。4月の選挙で再選を果たしたが年々独裁色を強めており、ロシアとプーチン大統領との関係を深めている。セルビアはEU加盟候補国だが対ロ制裁に同調せず、その消極的な姿勢が西側諸国の不興を買っている。

 ロシアに制裁を加えないのは、ガス協定のためではないかという批判をセルビアのブルナビッチ首相は否定。かつて自国がボスニア、コソボ紛争で経験した制裁を想起し、「制裁は平和に貢献せず、状況を悪化させる」と主張した。(ニュースサイト『バルカン・インサイト』)

Text by 山川 真智子