ポスト菅の外交・安全保障の行方は?

Eugene Hoshiko / AP Photo

 また、北朝鮮はミサイル技術の能力を大幅に発展させ、台湾海峡をめぐる緊張も高まるなど、日本周辺の安全保障環境はいっそう厳しくなりつつある。筆者も加わる企業の危機管理の世界では、在韓邦人(駐在員帯同家族)や在台邦人の安全・保護、南シナ海における商船の安全な航行などの議論を本格化させるべきとの意見が増えてきているようにも感じる。

◆やるべきことがはっきりしている外交安全保障
 上記のような国際情勢に照らせば、ポスト菅で実行されるべき外交安全保障政策はすでに「はっきり」している。日本のやるべきことは明確であり、まずは日米関係を基軸に、インドやオーストラリア、英国やフランスなど価値観を共有する国々との協力を重視した政策を展開していくことになる。よって、立候補者の誰が首相になったとしても、ポスト菅における日本の外交安全保障政策が大きく変わることはないだろう。

 当然ながら、各候補者によって心情や政策ビジョンが少なからず異なるので、バイデン政権との相性、中国や韓国との向き合い方などで多少の違いは見られるかも知れないが、それが抜本的に変わることはあり得ない。米中対立の最前線が日本周辺であり、中国のパワーが高まり、米国が多国間でそれに対処しようとする国際情勢は、日本の選択肢を逆に狭め、やるべきことをはっきりさせている。次期首相はそのなかで政権運営を行っていくことになる。

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Text by 和田大樹