中南米カリブ海で影響力を高める中国、その狙い

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◆中南米カリブ海は中台競争の場
 もう一つは台湾をめぐる問題だ。日本外務省によると、現在台湾と国交がある国は、ツバル、マーシャル諸島共和国、パラオ共和国、ナウル共和国、バチカン、グアテマラ、パラグアイ、ホンジュラス、ハイチ、ベリーズ、セントビンセント、セントクリストファー・ネーヴィス、ニカラグア、セントルシア、 エスワティニとなり、15ヶ国中9ヶ国が中南米カリブ海の国々だ。習政権は台湾が持つ国交の断絶政策を積極的に押し進めている。2016 年5月に蔡英文氏が総統に就任したとき、台湾と国交を持つ国は22あった。しかし、2016 年 12 月にサントメ・プリンシペ、2017 年6月にパナマ、2018 年5月にドミニカ共和国とブルキナファソ、2018 年8月にエルサルバドルが台湾との国交断交を発表するなど、中南米カリブ海の国々も中国との関係強化に乗り出している。今後も長期に続くとみられる習政権がグアテマラ、パラグアイ、ホンジュラスなどにテコ入れを強化することは想像に難くない。

 一方、今年になって、パラグアイ外務省は3月、新型コロナウイルスワクチンの提供を中国側から受ける条件として、台湾との国交断絶を中国側から要求されたとの事実を明らかにした。中国側はこの事実を否定しているが、習政権には国産ワクチンの提供を通じて、台湾との外交関係断絶、中国との国交樹立を加速させる狙いがあることは間違いないだろう。今後は日本だけでなく、バイデン政権やモリソン政権も中南米カリブ海諸国との関係強化に努めていくことだろう。

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Text by 和田大樹