中南米カリブ海で影響力を高める中国、その狙い

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 茂木外務大臣は7月、グアテマラとパナマ、キューバとジャマイカの中米カリブ海4ヶ国を訪問した。グアテマラの訪問で、茂木大臣は2020年に同国を襲ったハリケーンでの復興におよそ3億円の無償資金協力を行う考えを伝え、パナマでは投資を通じて同国の経済成長に貢献していく意思を明らかにするなど、日本と中米カリブ海諸国の関係強化に努めた。

 この訪問をリアリズムの視点から捉えると、真の目的は中米カリブ海で影響力を高める中国に対抗することにあると言えるだろう。

 それは、今回の茂木大臣の行動や発言からも十分に推察できる。たとえば、最初の訪問国のグアテマラで、茂木大臣は中米8ヶ国で構成される中米統合機構(SICA)の外相らとのオンライン会合を行い、法の支配による自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けて連携を強化するよう呼び掛けた。バイデン政権になって以降、米中対立から「先進民主主義諸国と中国」の対立に拡大し、インド太平洋構想を軸とする日米豪印の結束が強まるなか、日本にはインド太平洋の最も東に位置する中米諸国と連携を強化したい考えがある。また、今回は茂木大臣が同4ヶ国を訪問する形となったが、そこにはバイデン米大統領やモディ印首相、モリソン豪首相の願いも含まれていると言えるだろう。

◆中南米カリブ海で影響力を高める中国
 中国が中米カリブ海で影響力を高めようとする狙いは、単に一帯一路による経済的な目的以外に2つある。

 まず、米国へのけん制だ。米国は長年、中米カリブ海や南米を自らの裏庭と位置づけている。中南米ではベネスエラやキューバのように反米を掲げる政権も少なくないが、そこに中国が入ってくるとなると米国にとって別問題となる。習近平氏も国家主席に就任してから、ブラジルやアルゼンチン、ベネズエラやキューバなど中南米カリブ海諸国を積極的に訪問し、経済分野を中心に各国との関係強化を進めている。また、最近ではワクチン外交を中南米にも積極的に展開するなど、米国はそういった動きに警戒を強めている。中国側にも、「米国が中国の核心的利益に触れる行動を取っているように、米国の裏庭を突いてやろう」という思惑があるのだ。

Text by 和田大樹