ワクチン外交で台湾潰しの可能性も 中台対立のもう一つの側面

台湾と国交を持つパラオのウィップス大統領と蔡英文総統(3月30日、台北)| Taiwan Presidential Office via AP

 中台の間で対立が激しくなっている。中国海軍は5日、台湾周辺の海域で空母「遼寧」などの艦艇が軍事訓練を実施し、今後も同様の軍事訓練を定期的に実施していくと明らかにした。また、台湾国防部(国防省)は7日、中国空軍の戦闘機10機が台湾の防空識別圏に侵入したと発表したが、先月には過去最多となる20機の中国軍機が侵入するなど緊張が続いている。米国も台湾も中国も、これまでになく激しい舌戦を繰り広げている。
 
◆国交をめぐる中台の対立
 だが、中台をめぐる対立はそれだけではなく、国交という舞台でも両者はしのぎを削っている。中国は台湾と国交を持つ国々に対し、一帯一路構想に基づき、多額の資金援助をするなどして政治的に接近し、台湾との国交断交、そして中国との国交樹立を進めていきたいという狙いがある。

 台湾と国交を持つ国々は減少傾向にあり、台湾は厳しい立場にある。2016年5月の蔡英文総統の就任当時、台湾は22ヶ国と国交を結んでいたが、現在では15ヶ国にまで減っている。近年では、2016年12月のサントメ・プリンシペ、2017年6月のパナマ、2018年5月のドミニカ共和国とブルキナファソ、2018年8月のエルサルバドルなどが次々に台湾と国交を断交し、中国と新たに国交を樹立した。ちなみに、外務省の情報によると、現在台湾と国交を持つのは、南太平洋地域でツバル、マーシャル諸島共和国、パラオ共和国、ナウル共和国、欧州ではバチカンのみ、中南米カリブ地域ではグアテマラ、パラグアイ、ホンジュラス、ハイチ、ベリーズ、セントビンセント、セントクリストファー・ネーヴィス、ニカラグア、セントルシア、アフリカではエスワティニのみとなっている。

Text by 和田大樹