ワクチン外交で台湾潰しの可能性も 中台対立のもう一つの側面

台湾と国交を持つパラオのウィップス大統領と蔡英文総統(3月30日、台北)| Taiwan Presidential Office via AP

 多くの国は小さな島国であり、中国としても同15ヶ国の国際的影響力は限られ、経済的な接近を中長期的に行えばそれほど難しい問題ではないと思っているのかもしれない。近年、中国は南太平洋の島国へのテコ入れを強化しているが、2019年6月にソロモン諸島とキリバス共和国が相次いで台湾と断交、中国と国交樹立を果たし、現在、南太平洋で中国と国交を持つのが10ヶ国、台湾と持つのが4ヶ国となっており、台湾の劣勢が続いている。

 太平洋でのプレゼンスを高めたい中国からすると南太平洋地域は戦略的要衝だろう。すなわち、南太平洋の島々は西太平洋と隣接し(にあり)、中国が南米貿易を強化したいのであればその中継地点となり得る。そして、南太平洋への接近は、中国にとって影響力を拡大するだけでなく、台湾潰しにもなるのである。

◆ワクチン外交で圧力をかける中国
 一方、パラグアイ外務省は3月24日、新型コロナウイルスワクチンの提供を中国側から受ける条件として、中国側から台湾との国交断絶を要求されたと公表した。中国側はこの事実を否定しているが、国産ワクチンの提供を通じて台湾との外交関係断絶、中国との国交樹立を迫りたい狙いがあるのは確かだろう。

 今後のコロナ情勢の行方にもよるが、仮に台湾と国交を持つ国々への感染が長期化、再流行すれば、中国はワクチン外交を通じて台湾潰しに拍車をかけていく可能性もある。

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Text by 和田大樹