置き去りにされるグローバル安全保障への懸念

ヤンゴンで抗議デモに参加する人々(5月6日)|AP Photo

 さらには、日本メディアではほとんど報道されなくなったイスラム国の問題でも、依然としてイスラム国支持組織は中東やアフリカ、南アジアなどで活動し、行方が不明な外国人戦闘員、またその家族の人権など多くの課題が残っている。

 バイデン政権は国際協調、人権を前面に出してはいるが、それらは中国への意識が強くなり、テロや内戦などいわゆるグローバル安全保障の動向が非常に懸念される。

◆今後の世界情勢
 現在の状況だと、世界の主要国たちが米中対立を中心とする競争ばかりに関心を集める一方、グローバルな安全保障上の課題への意識が低下することが懸念される。以前、米国は世界をリードする超大国と言われたことがあったが(いまでもそう言う人々もいる)、オバマ、トランプの両元大統領とも、米国は世界の警察官ではないと断言した。米国がグローバルなリーダーシップから自然に身を引いていることは間違いない。

 いくら米国が世界で圧倒的なパワーを持っていても、米国も国家であり、米国にとって最も重要なのは国益である。日本人は必要以上に米国に期待するべきではない。だが、米中対立に必要以上に力が注がれ、それ以外の国や地域への主要国の関心が薄れ、グローバルな安全保障上の課題への対処が疎かになることも懸念される。世界は非常に難しい時代に入っていると言えよう。

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Text by 和田大樹