置き去りにされるグローバル安全保障への懸念

ヤンゴンで抗議デモに参加する人々(5月6日)|AP Photo

 近年、米中の対立が深まるだけでなく、新型コロナウイルスの感染拡大や中国の覇権的行動により、英国やフランス、ドイツなどの欧州諸国も中国への警戒をこれまでになく強めている。また、インド太平洋ではオーストラリアやインドも同様の姿勢を示し、大国化する中国に対し民主主義国家が協力していかに対処すべきかに世界の注目が集まっている。

 一方、ロシアはロシアで欧米と対立するなかでも、中国とはつかず離れずの独自路線を進み、北朝鮮はこれまでの孤立的な路線を堅持するなど、世界は正にG0の世界(指導者なき世界)を突き進んでいるように感じられる。

◆バイデン政権は国際協調、人権を前面に出してはいるが……
 今年誕生したバイデン政権は、脱トランプを掲げ、国際協調主義や人権重視の路線を鮮明にしているが、最近、筆者にはそれが「中国に対抗する意味での国際協調」に映る。また、バイデン政権は中国との関係において協調できる部分では協調する姿勢も示しているが、その最たる地球温暖化においても、現在の状況は「競争」が「協調」の部分を覆おうとしている。

 バイデン政権は先月、同時多発テロからちょうど20年となる9月11日までにアフガン駐留米軍の完全撤退を発表した。バイデン政権がイスラム過激派の脅威があることを認識しつつも、中国の軍事大国化を最も差し迫った脅威と位置づけていることは明白だ。だが、今後のアフガニスタンの治安情勢やグローバルなテロ問題はどうなってしまうのか。非常に動向が懸念されている。

 また、2月初めからミャンマークーデターが大きな問題となり、欧米諸国は一斉にミャンマー国軍幹部に対し経済制裁を発動したが、今日までそれ以上踏み込んだ行動には出ておらず、ミャンマー国内では厳しい状況が続いている。

Text by 和田大樹