クアッド、「中華同盟」 それぞれの陣営作りを急ぐ米中

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 バイデン大統領の就任から早くも1ヶ月となるが、同政権の対中姿勢も鮮明になってきた。基本的にバイデン政権は中国に対して厳しい姿勢で、同盟国と協力しながら中国に対抗する姿勢である。そして、米中両国は現在、相互の陣営確保で火花を散らせている。

◆米国陣営を固めるバイデン大統領
 バイデン大統領は2月5日に政権の外交方針について演説し、中国を「最も重大な競争相手」と位置づけ、安全保障や人権、経済や知的財産、グローバルガバナンスなどあらゆる分野で対抗していく姿勢を鮮明にした。そして、英国やフランス、ドイツなどの欧州諸国、日本や韓国、オーストラリアを「最も親しい友好国」と呼び、これら同盟国との協力を重視していく姿勢を強調した。

 また、バイデン大統領は2月8日、インドのモディ首相と電話会談を行い、安倍前首相が提唱したインド太平洋構想や日米豪印の枠組み「クアッド」を通じて地域の平和・繁栄のため協力していくことで一致した。ブリンケン米国務長官も9日にインドのジャイシャンカル外相と電話会談を行い、同様の見解で一致している。クアッドはアジア版のNATO(北大西洋条約機構)とも呼ばれたりするが、日米豪印4ヶ国を中心にインド太平洋地域における安全保障協力を推進するものだ。インドはこれまで中国との経済関係からクアッドに加わることに難色を示してきたが、新型コロナウイルスの感染拡大以降、印中国境での軍事衝突で45年ぶりにインド側に死者が出るなどしたことから、モディ政権は中国への不信感をこれまでになく募らせている。それによって、インドはクアッドに接近を図っており、バイデン政権はインドをクアッドには組み込みたい狙いがある。

Text by 和田大樹