「香港国家安全法」支持53ヶ国、反対の倍 見えてくるもう一つの世界

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◆52ヶ国が中国支持に回る理由
 まず、中国と同じように独裁的、もしくは権威主義的で、イスラム過激派のような反政府勢力の問題を抱えている国々である。エジプトやイラン、パキスタン、シリア、サウジアラビアなどは権威主義体制であるだけでなく、イスラム過激派など反政府組織の問題を抱えている。そして、新疆ウイグルをめぐる中国の情勢は、こういった国々と状況が似ている。体制を維持するため、市民への統制を疎かにするわけにはいかない、反政府組織には厳しい対応をとるという共通点がある。2019年7月にも、今回と同じように国連人権理事会の加盟国である英国や日本など22ヶ国が、新疆ウイグル自治区で続く人権侵害で中国を非難する共同書簡を提出したが、ロシアや北朝鮮、パキスタン、シリア、アルジェリア、サウジアラビアやエジプトなど37ヶ国は中国を擁護する立場をとった。

 そして、それ以上に現実的な背景が一帯一路による莫大な資金援助である。エジプトやイラン、パキスタン、シリア、サウジアラビアも事情が似ているかもしれないが、今回の52ヶ国には、カンボジア、カメルーン、モザンビーク、ミャンマー、ネパール、ラオス、パプアニューギニア、スリランカ、ザンビア、ジンバブエなど多額のチャイナマネーを受け取っている国々がある。すでに債務超過が進む、返済すらできない国もあるというが、国内でインフラ整備や都市化を押し進めるためにも、中国支援の立場に回らければならないという政治的プレッシャーもあると考えられる。また、中国との貿易関係が深まっているアフリカや中南米の国々からすると、そもそも香港問題への興味や関心が薄く、経済的パイプから北京の顔しか見ていないという背景もあるだろう。

Text by 和田大樹