北朝鮮、なぜいまビラに過激反応しているのか?

Kim Do-hun / Yonhap via AP

◆国内から高まる金体制への反発・抵抗
 そして、二つ目は金体制そのものへの反発・抵抗である。これは一つ目とも関連するが、生きていく上で必要な食糧やカネに辿り着けなくなると、国民の不満や怒りが政府に向かうということは、北朝鮮も例外ではない。貿易の9割以上を頼ってきた中国からの輸入が9割も減るということは、金正恩政権にとって、また歴代政権も経験したことがない危機である。

 そのようななか韓国の脱北者団体が現体制を批判する内容のビラを巻き、それが北朝鮮の国民や兵士の目に触れると、金体制への反発・抵抗が高まる可能性があり、金正恩氏はそれを恐れている。今回のビラ散布によって、北朝鮮メディアからは市民が強く憤るシーンが流されるが、金正恩氏としては怒りの矛先を外に向け、現体制の威信を守りたい狙いがある。

◆停滞する米朝交渉への不満
 三つ目は、停滞する米朝交渉だ。トランプ大統領は就任当初から金正恩氏をロケットマンなどと非難し、米朝の政治的緊張が非常に高まったが、それ以降両者は3回も顔を合わせ、朝鮮半島の雪解けが期待された。しかし、核の完全廃棄を譲らないトランプ政権の姿勢が変わることはなく、今日まで米朝関係でそれ以上の進展は見られない。それに不満を強める北朝鮮は、太陽政策を堅持する文在寅政権に仲裁役を期待したが、思うように進展が見られないことから韓国への不満も強めていた。つまり、北朝鮮は文在寅政権が強硬姿勢に転換することはないと判断し、文在寅政権の足元を見ているといえる。

Text by 和田大樹

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