イスラム国は再生するのか? テロ事件に不穏な変化

Hadi Mizban / AP Photo

 今年に入って、米イラン危機、そして新型コロナウイルスの脅威に世界は直面している。イラク情勢においても、近年、報道されるのは米イラン対立や反政府デモをめぐるものである。そのようななか、あのイスラム国によるテロ事件が最近になって急激に増えているのだが、日本ではほとんど報道されない。

◆4月に鋭く増加したテロ事件
 今年に入ってのテロ発生件数は、1月に79件、2月に82件、3月に61件だったが、4月は110件と大幅に増加した。110件のうち2件は、親イランのシーア派武装勢力によるものであり、南部バスラにある米国系企業の施設への攻撃と、バグダッドにある中国企業への攻撃だった。

 残りの108件はイスラム国によるテロで、とくに首都バグダッドに近いディヤラ県、北部のキルクーク県とニナワ県での発生件数が増えており、108件のテロで81人が死亡、162人が負傷したという。細かい数字は違うが、ほかの欧米研究機関や現地情報からも同様の見解が示され、イスラム国が勢力を盛り返すことへの懸念が広がっている。なかには、イスラム国がイラクで支配地域をどんどん拡大した2014年初期のようだと表現する専門家もいる。

 また、シリア東部の砂漠地帯でも7日にイスラム国による攻撃があり、アサド政権軍の兵士など20人が殺害された。同じ場所では先月にも同様の攻撃で27人が亡くなっている。

Text by 和田大樹