イスラム国は再生するのか? テロ事件に不穏な変化

Hadi Mizban / AP Photo

◆テロがより計画的に? 洗練されている?
 イスラム国の再生を懸念する声は、なにもテロ事件の数だけをみて広まっているのではない。最近、イスラム国のテロ事件は「非常に計画的で、より洗練されたものになっている」との指摘が増えている。テロ組織というのは、基本的に資金がないときには身代金目的の誘拐を繰り返し、余裕があるときにはより計画的、大規模なテロを実行しようとする。イスラム国のテロが計画的かつ洗練されたものなら、それだけイスラム国が余裕を持って活動できる土壌がイラクで広がっていることが想像できる。

 また、米軍の縮小や新型コロナウイルスの感染拡大も影響している。イラク軍を支援してきた米軍の縮小によって、対テロ掃討作戦で技術的な影響が出始めている。新型コロナウイルスの感染拡大によって、バグダッドなどでも外出禁止令が発令され、軍や警察の多くはそちらに時間を割かれ、対イスラム国作戦に支障が出てきている。

◆イスラム国がほかのテロ組織と違う怖さ
 イスラム国の活動がシリア・イラクで再び活発になれば、それは両国だけに脅威となるのではない。イスラム国はほかのテロ組織とは違う。その違いはグローバルに拡散するイデオロギー的なネットワークだ。

 現在でもイスラム国を支持する武装勢力は、アジアや中東、アフリカ各地で活動しているが、依然としてそのイデオロギー的な中枢はシリア・イラクである。要は、両国でのイスラム国の活動が再び活発化すれば、各地域のイスラム国支持組織が呼吸を合わせるかのように勢いづく恐れがあるのだ。すでにそれぞれの組織は活動しているが、中枢の再生は、新たな正当性やモチベーションを各組織に与えることになるかもしれない。

Text by 和田大樹